59歳になっても

アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』が発売されたのは1967年、ポール・マッカートニー25歳の時だ(と考えるとおそろしい)。「ホエン・アイム・シックスティー・フォー」が収録されているが、このころポールは64歳はおろか30歳になる自分をイメージできていただろうか(僕は全くできていなかった)。そのポールもついに70歳である。




落合仁司著『保守主義の社会理論』という本をパラパラやっていた。
「人間とその社会を、理性によって目的合理的に制御しうるし、またそうすべきである、と考える合理主義と、人間とその社会を、個体的な欲求充足に還元しうるし、またそうすべきである、と考える個体主義」という「近代進歩主義」に対する懐疑としての保守思想を扱ったものだが、この本には二つの特徴がある。
一つはサブタイトルに「ハイエク・ハート・オースティン」とあるように、この三人の思想を軸に保守思想について考察する。ハイエクはともかく、後者の二人は保守という文脈からはあまり語られることはあまりないだろう。
もう一つが、この三人の保守思想を、ウィトゲンシュタイン由来の言語ゲームを使って読み解こうとしていることである。
内容としては、この手の話が好きな人にとってはそれなりに面白く読めるのだろうが(僕もその一人である)、「正統的」(という言い方でいいのかわからないが)な保守思想について学び考えたいと思って手に取るとやや肩透かしをくらう人もいるかもしれない。

本書が出版されたのは1987年、つまり今からちょうど25年前のことである。
「あとがき」には落合の知的遍歴というようなものが軽く触れられている。「遅れてきた左翼青年」として社会哲学に興味があるのだが、このまま経済学部へ進むべきなのだろうかという悩みを村上泰亮に相談したこと。学部、院生時代に宇沢弘文、浜田宏一らに師事したこと。西部邁に「文章を書く覚悟の、言わば苛烈であること」を見出したことなど(中沢事件が勃発するのが88年なので本書出版時まだ西部は東大教授だったのですよね)。

そして「二十代の終わり」に、落合は「言語研究会」に出会う。落合は橋爪大三郎、大澤真幸、宮台真司、西阪仰の名前を挙げて、このような「哲学的な社会学者」との討論の中から本書が生まれたとしている。
本書の内容を見れば、橋爪の『言語ゲームと社会理論』からの影響が想像できるが(といいつつ僕は未読なのですが)、「わけても橋爪さんとの知的なさらには倫理的な交遊なくしては、本書は、決して書かれなかったに違いない」としている。

落合はその後神学の研究に向かうという展開を見せるのだが(『ギリシャ正教』の著者と本書の著者は同姓同名の別人なのではないかと思っていた)、橋爪と大澤も『ふしぎなキリスト教』という対談を出版し、ベストセラーになるのだが、同書はキリスト教の知識がある人たちから厳しく批判されている。僕が知る限りでは橋爪も大澤もこの批判にたいして反論も訂正もしていないと思う。これを知的不誠実と言わずしてなんと言うかという気分なのだが、今、落合はこれをどう思っているのだろう。

本書の「あとがき」は京都で書かれているが、これは落合が同志社大学に職を得たためである。その後97年には大澤も京大にやってくるが、その退職の経緯というのは友人にはどう映ったのだろう。

87年段階では、橋爪はそれなりに知名度はあったかもしれないが、大澤、宮台といったあたりは一般的にはまだ無名だっただろう。
そして90年代前半から半ばにかけて宮台が「有名」になっていく過程というのは昔からの知り合いにとってはどのような光景だったのだろう(別に驚かなかったのかもしれないけど)。
僕は個人的に「社会学」(あくまで括弧付き。より正確には「ニッポンの社会学」とでも言うべきか)に対してかなり否定的な感情を持っているのだが、これは主にこの「哲学的な社会学者」たちによって担われていた(る)のですよね……

なんてことを思いながらふと著者略歴に目をやると、落合は1953年生まれ、つまり現在の僕の歳に本書を出版したのである。87年といえばちょうどバブルの狂騒が始まりだしたころか。あのころには25年後の2012年の日本がこんなことになっているなどということを想像した人はまずいなかったであろう。
2012年から25年後の2037年、日本がどうなっているかを想像すると、暗く絶望的な気分にしかならない。それよりも、僕が59歳になっているなんて、そんなことが現実に起こりうるとは思えないのだが、鏡を見るとすでに髭が白いものだらけになっとる自分がいる……


「64歳になっても僕を必要としてくれる?」というか34歳でもそんな人いませんから! でも「友だちの助けがあればなんとかなるさ」って、なるのかな……




「友だち」の助けがね……。「おぉ、ガール。すぅぅぅぅっ」








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Author:佐藤太郎(仮)
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