ライアン・ゴズリングあれこれ

『ドライヴ』






孤独な男が報われぬ愛のために絶望的な戦いに挑む、というだけである種の人にとってはたまらんという感じでしょう。僕もその種の人なのでたまらんかったです。

いろいろな切り口から語れるのだろうが、個人的にはこの作品の魅力は「宙吊り」感にあると思える。
ストーリーから『タクシー・ドライバー』を連想する人も多いだろうが、あの作品では「視点」はトラヴィスに肉薄してはいても同一化はなされてはいなかった(エンディングを見よ)。
『 ドライヴ』においては「視点」はどこにあるのだろうか。あのあまりに印象的なエレベーターでのキスシーンは、「ドライバー」の見た幻想とも考えられ、そうであるならばこれは一人称的視点から描かれているとも解釈できる。しかしその直後の惨劇によって二人は同じ世界に住むことができないのだということが、突き放したような形で三人称的に突きつけられてもいる。この一人称的な幻想ともつかない光景と、三人称的な冷たいショットとがシームレスにつながるというより断絶している。
物語の結末としてはいささか奇妙というか拍子抜けのように思えなくもない。エンディングは感情移入を誘導していくようでそこへどっぷりとはつからせないようでもあり、そのような宙吊りにされた「余白」を観客がいかに埋めていくかによって感じ方というのも変わってくるのではないだろうか。

音楽も素晴らしかったけど……






なんといってもレフン監督を指名したゴズリングの勝利という感じか。
宇多丸さんがシネマハスラーでしきりにあげていたレフン監督、トム・ハーディ主演の『ブロンソン』はもうすぐ日本版DVDが出るのね。






んでもって『スーパー・チューズデイ』もついでに観てみた。






民主党の大統領候補を決める予備選挙を舞台にしたポリティカル・サスペンス。
ジョージ・クルーニーといえばバリバリの民主党支持者として知られており、彼がリベラルな大統領候補を演ずるというのはやり過ぎという気がしなくもないし、民主党を美化するのではなく(インターンに手を出すとか、クリントンを連想せずにはいられない)アメリカの選挙におけるドロドロとした裏事情を描くというのも逆にさもありなんという感じもしてしまう。ジョージ・クルーニーは監督としてはなかなか手堅い人だと思うのだけれど、それだけに『グッドナイト&グッドラック』あたりと比べるとかえって「余技」という印象がしてしまう。
ポリティカル・サスペンスという部分では後半もう一捻り欲しいところではあったが、つまらなくはなかった。つまらなくはないんだけど、ああそうですかという感じで終わってしまっているような感じも。
ライアン・ゴズリングは若く切れ者の選挙参謀を演じているが、正直強烈な印象を残すという感じではないのだけれど、こういう使い方をされるのは期待されているんだろうなあといったところか。


僕がライアン・ゴズリングという名前をきちんと意識したのは『ラースと、その彼女』だったので、ついでに思い出してみて。






ラブドールを「恋人」にしてしまう内気な青年が少しばかりの成長を遂げる物語という風にもとれるが、なんといってもこの作品は「ファンタジー」として考えるべきだろう。どこがファンタジーなのかといえば、それは登場人物が皆いい人であることだ。兄貴もぶつくさ言いながらも弟を気遣っているし、兄嫁も同様である(ちなみに最初見ていた時は、途中までラースは兄嫁に気があって、その妊娠を受け入れられないせいでガレージに引きこもってしまったのかと思っていたが、それくらいい人である)。職場の人たちも町の人たちも基本的にはみんないい人だ。

ではリアル版「ラースの生活」があったらどうだっただろうか。ラースみたいな極度に内気な人はアメリカだと学生時代には極度のいじめにあったかもしれない。作中では教会でおばあさんに、女の影がないもので(男の影もないのだけれど)「あなたゲイなの?」みたいなことを訊かれていたと思う。ここでは孫(だったっけ?)もゲイだから気にしなくてもいいのよ、みたいなことであったが、余程リベラルな土地柄でもない限りこうはいかないような。
ラースがラブドールを恋人にしてしまうのは、大人になる=性的関係を結ぶことができないというコンプレックスと、ライナスの毛布的な不安症が絡み合ったものとも考えられるが、このような精神状態に追い込まれてしまう一因は小さな町なもので皆がラースのことを知っているという、一種の衆人環視状態にあるのかもしれない。
「ねぇ、ちょっと聞いた? ○×さんとこの息子さんったらね……」なんてことを言われてるのを想像しただけでうげ~ってなってくる。いずれにしてもリアル版「ラースの生活」があれば、それは地獄の風景が延々と映し出される物語になるとしか思えないのであります。

とはいえ鬱映画といえばやはり『ブルーバレンタイン』か。






ラースがやさぐれてしまった!というか、予備知識を一切なく見たら同じ役者が演じているとは思えなかったかも。
これ観たら結婚とかもういいわ、となる……とか思う前に相手がいるのかどうかについて心配するほうが先なんだけど。

ということで『ドライヴ』いいよ、と薦めたら「オスメント君が出てるやつでしょ」と返してくるのは禁止!確かにライアン・ゴズリングを見るたびに頭の中にちらっとよぎってしまうのだけれど。
ライアン・ゴズリングも子役出身なんだけどなあ。人生というのは何が待っているのかわからないものです。


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佐藤太郎(仮)

Author:佐藤太郎(仮)
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