『コンゴ・ジャーニー』

レドモンド・オハンロン著『コンゴ・ジャーニー』




冒頭、いきなり占い師に見てもらうところから始まる。アフリカ土着のようで西洋人に毒されているようでもある女占い師。真面目なんだか適当なんだか、そういったものが溶け合っていくような……これは本書全体を貫くトーンでもある。

コンゴ奥地のテレ湖に謎の恐竜「モケレ・ムベンベ」を見つけに行くというのが旅の目的なのだが、ここからしてどこまで真面目なのか照れ隠しなんだか。

本書はカズオ・イシグロが絶賛したようだが、旅行記というより小説に近い読後感がある。
ここらへんはおそらくは意図的なものであろう。そもそもいったい何年にした旅の記録なのだかということすら書かれていない! 「訳者あとがき」によれば89年か90年のことのようで、原著刊行の96年の時ですら状況はかなり変わっているというのに。 ちなみに「コンゴ人民共和国」は当時は社会主義政権。その後「コンゴ共和国」と改称される。本書にも結構顔を出す隣国は、当時はザイールで97年に「コンゴ民主共和国」に改称。ややこしい……。
オハンロンの他の著作は読んでないので全てがこういうスタイルで書かれているものかはわからないが。

オハンロンはコンラッドについての著書もあるようだが、そうなると当然『闇の奥』が浮かんでくるのだが、過酷であるがどことなくただようキッチュな感じは『闇の奥』というよりそれを原作としたコッポラ監督の『地獄の黙示録』に近い。
なんてったって登場人物が皆一癖も二癖もあるすっとんきょうな人々ばかりで、不条理コメディのようでもあり。

著者はイギリス人で相棒を務めるは20年ぶりに再会したかつての学友のアメリカ人である。
このような生まれの白人がアフリカへ行くとなると当然歴史というものに目を向けなければならないのであるが、そのような「社会派」的視点は皆無ではないものの(アフリカの現状やレオポルド2世がコンゴで何をしたかについてもちらりと出てくるが)前景化されることはない。生真面目な人だとここらへんもうちょっときちんとページ割いて考察しろよ!って思ってしまうかも。

まあともかく滅法面白いというのは間違いない。
もっとも自分もこんな旅をしたい!と思うかは両極端に分かれるだろう。
僕としては旅の描写を読むと(マットレスの下いっぱいのゴキブリ軍団!)こういうのが出来ないから都市になれきった人間が旅行記を読むのだよなあというところでして。



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