『アメリカの地下経済』

スディール・アラディ・ヴェンテカテッシュ著『アメリカの地下経済』





著者(名前がなかなか覚えられないが『ヤバい社会学』の人)は現在はコロンビア大学で強弁をとる社会学の教授。彼がシカゴの「マーキーパーク」(仮名)で長年フィールドワークした経験をまとめたもの。注も多くつけられているが堅苦しい学術論文という感じではなくすらすら読める。
ちなみに原題はOff the Booksであります。

「マーキパーク」はいわゆるアメリカの都市部の「ゲットー」としてイメージされるような地域である。
貧困と退廃と無気力とが蔓延している……ように思われがちだが、どっこいそこはやはり生きている街、さまざまな経済活動が営まれている。

本書の主人公の一人となるのがギャングのボスである「ビック・キャット」である。彼はある面では街に暴力と退廃とをもたらすが、その一方で彼によってある種の秩序がもたらされていることも確かであった(過去形なのは冒頭でいきなり殺されてしまうため)。

ここからもわかるように、この街ではよく言えば人は支えあって生きているし、悪くいえばずぶずぶの関係に絡み取られてしまっている。
警官、聖職者、商店主から非合法経済活動(売春婦など)に従事する人まで、互いに利用し、利用されている。

印象深かったのは商店主がホームレスなどに半端仕事などをさせているとこ。
これも一面では「慈善」であり、見知らぬ他人より街の事情をよく知る人に仕事をしてもらうことでうまくいくし、商店の評判もあがる。ホームレス側からしても貴重な現金収入源となる。こういうと「ウィン・ウィン」の関係のように思えるが、結果としてみるとホームレスの人は自立するほどの収入が得られるわけではなく、またそれでもなんとか生きていけてしまうために生活を立て直すきっかけを失ってしまう。街を離れれば孤立してしまうし、街に留まればずるずるいくばかり。

初めはこういう街でもみんな結構うまくやってるじゃん、と思えたがそのうちに支えあっているのか足を引っ張り合っているのか微妙なようにも思えてくる。

著者は「マーキーパーク」のような街の行く末に悲観的であり、地下経済に頼る生活から抜け出さなければならないが、なまじコミュニティが機能してしまってるがために抜け出せないとまとめている。確かに一般論としてはその通りだと思うのだが、一方でこういうコミュニティへのあこがれのようなものを抱く人というのもいるのだろうなぁとも思える。確かにここにはある種の魅力があることは否定しがたい。かといって永久運動が存在しないように、このようなコミュニティはジリ貧になっていくことも確かだろうし、やはり「健康的」とは言いがたい。アンビヴァレントな気分にもなるが、行政から見捨てられたゆえに手を取り合って/足を引っ張り合って生きている人々が、それゆえにさらに行政からさらに見向きもされないという悪循環に陥ってしまうことはしっかりふまえなくてはならないだろう。
日本の状況にすぐにあてはまるというのではないが、なかなか示唆にとんだ部分も多い。

ついでにアメリカの文化シーン、特にヒップホップに興味ある人なんかが読んでもなかなか面白いんじゃないかなあ。


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佐藤太郎(仮)

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