DVDのかんそう

ツタヤが百円の時にまだ見てなかったものをいろいろと。

『ラスト、コーション』



モチーフとして政治と性のアナロジーというのはめずらしいものではない。ベルトリッチあたりが好んで撮りそうな題材でもある(パゾリーニが撮ればもっとすさまじく歪んだものになっていただろうけど)。対日協力者(ファシスト?)がサディスティックな性行為に及ぶというのもありきたりといえばありきたりの描写ではある。

学生演劇グループが行う暗殺計画とその顛末は、戦時中の抗日運動のそれというより六〇年代の学生運動のような稚拙なものである。
また主人公を演じるタン・ウェイはご覧の通りかなりの童顔であるが(西洋人はただでさえ東洋人のことが子どものように見えてしまうというが、いったいいくつに映るのだろうか)セックス・シーンで腋毛が写し出される。ここらへんは不勉強なのだが、当時の中国人女性は腋毛を処理する習慣がなく、時代考証に基づく描写なのかもしれないが、仮にそうであったとしても腋毛を残しておいたのは意図的な演出なわけで、別に腋フェチとかいうのではないのだけれど、これには結構ドキっとさせられた。

この映画は「政治的」にはかなり微妙であるし、実際結構もめたようだ。
抗日の英雄を英雄としてではなくある種不器用で、間抜けとすら思えるように描く。あるいは最初の誘惑時は処女であり、人妻と偽っているため予想されるセックスのために処女喪失をし、その後性におぼれていくというのはフェミニズム的には「処女と娼婦」ということで問題といえば問題なのかもしれない。

このような二面性というものはある意味では類型的であるものの、同時にそこから微妙に身をかわしていくような魅力というものがあるようにも思える。
あんまり褒めたような書き方ではなかったけど個人的には同じアン・リー監督の『ブロークバック・マウンテン』よりも好きかな。




『プレステージ』



まだ見とらんかったのかいなという感じのクリストファー・ノーラン監督の2006年の作品。

運命が交差した二人の男のマジシャンとして、そして人間としてのせめぎあい。
冒頭で起こる事件。これはいったいどういうことなのかというのを時間軸をばらしながら少しずつ光を当てていく。
行きつ戻りつしながら少しずつ話が見えてくるというと当然『メメント』を連想してしまうし、脚本的には近い肌ざわりがある(映像的には大分違うが)。

『インセプション』が典型だけれどノーランって表向きのテーマをいかに描くかというよりも、メイン・プロットがあたかも装飾であるかのような映画を撮るのだなぁというか。
一応はミステリータッチなのだけれど、「オチ」に関しては結構早く分かってしまう人も多いと思う。しかしこの作品の眼目は謎解きにあるのではなく、二人のマジシャンの職業上と私生活上の反目が絡み合いながら抜きつ抜かれつしていくなかで、どちらがどちらを出し抜いているのか、いやそれどころか自分自身が誰とどのような勝負をしているのかだけでなく、自分という存在までもが揺さぶられていくところにある。
こういう現実崩壊感覚というのを大作映画と両立させるというのはさすが。

ニコラ・テスラとエジソン云々のくだりは予備知識がないとちんぷんかんぷんだろうけど。っつうかデヴィッド・ボウイだったのか。事前に知ってなければ気づかなかった人も多いかも。





『暴力脱獄』



結構こういう有名どころを観てなかったりするんですが、ようやく。

すごい邦題ですが原題はCool Hand Luke
ルークはパーキングメーターを壊して収監される。刑務所は厳しく支配されていたが、一方で囚人たちも独自のルールを作り上げていた。
微笑みを絶やず大胆不敵なルークはボクシングや卵の大食いによって囚人仲間から認められ、崇拝すら集めるようになるがついに脱獄を決意し……

ルークがキリストの暗喩になっている、というのは有名な解釈であるが(名前からしてね)、製作側は明らかにそれを意識している。
なんといっても卵の大食いの後のまるで磔刑像のようなショット。パーキングメーターを無意味に壊すというのも意味深のように思えなくもないし、ルークが脱獄を決意するきっかけとなるのは母親が亡くなった後脱走のおそれがあるとされて懲罰小屋に閉じ込められるためだが、無意味な規則に支配されている人々を解放しようするかのような行動はイエスによる律法に捉われ硬直化したユダヤ教批判と重ねているとも見える。

同時に必ずしもキリストの暗喩というのに留まってもいない。
ルークは「神」に挑戦するような無神論的なことを言い、彼が命じられる穴を掘っては埋めての繰り返しは『シーシュポスの神話』を連想させる。
確かにキリストを意識しているが、また実存主義的な神なき時代の不条理をも描いてもいる。ここでネガティブな記号が与えられるのは「犬」である。規則や命令に付き従い、規制秩序の守り手としての存在。

なんといってもエンディングは、ポール・ニューマンが亡くなっているということもあって涙なしにはいられないものとなっていますね。



卵大食い



Smiles of Cool Hand Luke



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