『九尾の猫』

エラリイ・クイーン著 『九尾の猫』




ニューヨーク中を震撼させている連続絞殺魔はいつしか〈猫〉と呼ばれるようになった。特別捜査官に任命されたエラリイ・クイーンは事件解明に乗り出すが……

僕はミステリーについては「嫌いじゃない」という程度なものでなぜか今ごろになって本作を読んでいるという次第でありますが。
これまで読んだクイーンの作品は「全盛期」ともされる30年代に書かれたものが多かったが、本作は49年発表。いわゆる「後期クイーン問題」とされるテーマを扱った作品である。

「後期クイーン問題」というのは僕の解釈ではこうなる。
これまでの探偵小説における探偵はパズルのピースを特権的位置から眺めるのみであり、そのことに疑いすら持たない存在であったが、「後期クイーン問題」とされる探偵小説における探偵は自らもピースの一つに過ぎないことを思い知らされ、そのことが読者に示されたり探偵自身が苦悩したりする(ミステリーに詳しいわけではないので「全然違うよ!」ということなのかもしれないが)。

本作において探偵クイーンは『十日間の不思議』におけるヴァン・ホー事件を引きずっており疲れていて自信なさげであり苛立っている。

ミステリー・マニアやクイーン・ファンにとって本作がどういう位置にあるのかはよくわからないが個人的には非常に好きでしたね。
「全盛期」における100パーセントパズル!って感じのも嫌いではないんですが好みとしてはこっちかな。

ハヤカワ・ミステリ文庫版の大庭忠男の訳者あとがきによればエラリイ・クイーンの一人であるフレデリック・ダネイが77年に来日したさい、自身のベストとして一位に『チャイナ・オレンジの秘密』、二位に『災厄の町』、三位に『途中の家』をあげ、番外として『九尾の猫』をあげたそうだが作者の思いいれと作品の微妙な位置を表しているのかもしれない。

ちなみに僕は矢吹駆シリーズが好きだったりして笠井潔の評論なんかもパラパラ読んでいるのだけれど、本作でアウシュヴィッツなどに思いをはせながらクイーンが「一つ一つの死を特別なものにするのは愛だとエラリイは思った。愛だけだと言っていい」(p.378)なんてことを独りごちていたりするとグっときてしまうのですよね。

腕のある人が映画化したら結構いい感じになりそうなんだけどなあ。そういえばクイーンの作品の映画化ってあんましないような。まぁ向いてないのも多いんだけど。







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佐藤太郎(仮)

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