ゴダール二本

ちょっくら時間ができたのだけれどいかんせんこの暑さ。いかがしたものかと思っていたら早稲田松竹にて『勝手にしやがれ』と『気狂いピエロ』がやってたのでこりゃいいわいと観てまいりました。

朝イチの『ピエロ』は2,3割の客入りでしたが昼の『勝手にしやがれ』は8割方埋まってたんじゃないでしょうかね。ゴダール人気なのか涼みに来てた人が多かったのかはわかりませんが。

『勝手にしやがれ』も『ピエロ』もDVD(いや、VHSかw)では観ているのですがスクリーンで観るのは初めて。やっぱりいいものですよね。『ピエロ』の赤くABCの字が浮かび上がってきただけで鳥肌モノでありました。

世の中訊かれて困る質問というものがある。「ゴダール好き?」というのもその一つだ。
相手を間違えて答えると「てめえごときがゴダール好きとか言ってんじゃねえぞ」と罵倒されないまでも軽蔑の視線を浴びることになる。
まぁこれも無理からぬことでありまして、とりわけ70年代以降のゴダールの作品というのは僕にとってはまるっきり論評不能なものとなってしまっております。

では『ウィークエンド』(これも非常に好きなのだが)までの作品についてなら存分に語れるのかというとそれも怪しかったりする。
例えば今回の『ピエロ』など鬼のような引用の山によって織り上げられているのだけれど、僕のような教養のない人間にとっては出典やアリュージョンなどまるでお手上げでなのである。
しかし、それでもやはり60年代までのゴダールというのはそれでも決して退屈することなく、僕のような人間にも極めて魅惑的な光を放っているのですよね。

その昔、ヌーヴェルヴァーグというものを知り、興味を持ってちょっと調べてみるとなんだか奇妙な印象というものを受けたものである。
ヌーヴェルヴァーグといってまず浮かぶのは手持ちカメラで街へ乗り出し、即興性をいかした演出というものであろう。その彼らがなぜヒッチコックを神のごとく崇めているのだろうか? もちろん映画的教養に溢れている人ならばきちんと説明ができるのかもしれないが、僕には(実は未だに)どうもよくわからなかったりもする。

Punk is Attitudeなんて言う人がいる。つまりパンクというのは音楽的スタイルの問題ではなくその姿勢にあるということだ。ヌーヴェルヴァーグというのもこれに近いのかもしれない。
なんとなく後知恵的に「ラディカルなゴダールにヌルいトリュフォー」なんてイメージを持ってしまっている人もいるかもしれないが、評論家時代に過激であったのは圧倒的にトリュフォーであった。
トリュフォーがとりわけ攻撃したのが当時のフランス映画のエスタブッリシュメントであった。「芸術的」には軽視されていたヒッチコック等の礼賛というのはそのアンチテーゼとして行ったとも考えられるだろう。

トリュフォーらが実作に乗り出してスクリーンに現れたもの、それは映画を撮るという喜びであったのではないか。それは当時のフランス映画界にとって最も欠けていたものであり、それゆえに観客もその喜びを共有できたということなのかもしれない。70年代以降のゴダールに僕がう~むと頭を抱えてしまうのは、そのような喜びを失っているとまで言っていいのかはわからないが、少なくとも(普通の)観客と共有しようという姿勢はなくなっているためであろう。


話が脱線してしまったが、改めてスクリーンで『勝手にしやがれ』と『気狂いピエロ』を観るというのはやはり刺激的体験でありました。

かたやゴダールの長編デビュー作であり、同時にいたるところにゴダール印が溢れており、かたやアンケートなどをとればゴダールの最高傑作に挙げる人も多いであろう作品であり、両者には共通点も多い。
主人公は共に刹那的享楽に走り、やがて破滅していく。そのような行動の背後にあるのは鬱屈と焦燥であろう。

一方でその差異にも注目したい。
『勝手にしやがれ』は瑞々しさというものが画面からこぼれ出てくる。ジャン=ポール・ベルモンドもジーン・セバーグも輝かんばかりである。ついに長編を撮れるという喜びと意気込みに溢れたゴダール自身の反映でもあろう。
『ピエロ』におけるベルモンドは倦怠と憂鬱に沈んでいる。アンナ・カリーナはエネルギーを完全に持て余しており、蛸が自らの足を食い散らかすような状態に陥っているようにも見える。ここもまた魅力的なのであるが(波打ち際をぶーたれながら歩くシーン!)これにはもちろんアルジェリア問題やヴェトナム戦争などの世相が影を落としているということもあるのだろうが、ちょうどゴダールとアンナ・カリーナが破局した時期でもあり、そこらへんもにじみ出てしまっているのかもしれない。

『ピエロ』といえばなんといってもその色彩に特徴のある絵作りで名高いが、この色合いが一層鬱屈や焦燥というものを強めているようにも思える。
『勝手にしやがれ』も現在でも色褪せることのない題材であると思うが、現在よりグッとくるのは『ピエロ』の方かもしれない。
それにしても歌い出すアンナ・カリーナもそうだがぬいぐるみをブラブラさせているとこの可愛らしさといったら!



『ソシアリズム』は見逃していたのだが来週やるのか。これも行ってみようかな。
あと『ふたりのヌーヴェルヴァーグ』も。





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佐藤太郎(仮)

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