オムライスのアイデンティティ


家でメシを食おうと冷凍庫をのぞいてみるとニチレイのチキンライスがあったので、こりゃいいわいとオムライスを作ることにした。
レンジでチキンライスを暖め、その間に映画『タンポポ』風のふわトロオムレツ……は作れないので普通の薄焼き卵に。それもチキンライスをくるっと包んだりというような余計なことはしない。ペコっと上に乗せるだけ。胃袋に入れば同じことよ。ってな感じでいざ食べようという段になって、ケチャップが見つからない。確実に冷蔵庫のどこかに眠っているはずなのに(眠らせるなって)。

そんな訳でケチャップをかけないオムライスを食べながら思ったのだが、オムライスというのはいささか奇妙な食べ物なのかもしれない。だってすでにケチャップで味付けされているのにさらにもう一回ケチャップをかけるってどうなのよ。とはいえやはりそこはケチャップでしょうってとこでもあるのですよね。
洋食屋なんかではケチャップではなくデミグラスソースなんかがかかってることもあるが、選べるのならやはりケチャップでいきたい。ファミレスなんかではデミグラスソースどころかオムライスのビーフシチューかけなんてのもあるが、そこまでいくとそれはもうオムライスではなく別の名称を与えるべきなのではないかという気もしてくる。

それにしてもオムライスがオムライスたるべきアイデンティティとはなんなのだろうか。
村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』にオムライスが出てくるが、そこでは確か「ケチャップごはんを卵でくるんだもの」というような表現がなされていたと思う。本の山の奥深くに沈んでいるので確認できないが、とにかく「チキンライス」ではなく「ケチャップごはん」であったように記憶している。
これを初めて読んだ時には結構衝撃を受けた。オムライスとはチキンライスを卵でくるんだものという思い込みがあったためだ。考えてみればベーコンとタマネギあたりを具に炒めたご飯をケチャップで味付けし、卵でくるんで上にケチャップをかけて出されたら、それはやはりオムライスという以外に呼びようがないのかもしれない。少なくともチキンライスを卵でくるんでビーフシチューをかけたものより余程オムライスらしい。

食べ物のアイデンティティというものを考え始めるとこれはなかなか難しい。
冬の定番料理といえば豚汁であるが、豚汁を名乗る以上豚を他の肉で代用することはできないだろう。ここまではいい。しかし中には里芋の入っていない豚汁など豚汁ではないという人もいるかもしれない。そんな人は人参、あるいは大根、牛蒡が入っていない豚汁を豚汁と認めるのだろうか。
豚バラでダシをとって豆腐をブチ込んだだけの味噌汁も立派な豚汁という人もいるのかもしれない。そこにキムチを入れてもなかなかうまそうだが、そこまでいくとさすがにこれを豚汁と呼ぶ人はいないだろう。

さらに不可思議なのがけんちん汁という奴である。豚汁の肉抜きという扱いなのか、それとも他に拠って断つ、けんちん汁がけんちん汁たる確固とした基盤を持ち合わせているのだろうか。
だいたい醤油仕立てなのか味噌仕立てなのかという基本中の基本の部分で統一がなされていないにも関わらず同一の料理名で呼ばれるというのもすごい話のような気がする。
我らがウィキペディアで確認すると精進料理なので肉はなし、醤油仕立てというのが「正しい」けんちん汁のようである。しかし鶏肉入りの味噌仕立てをけんちん汁などではないと自信をもって断言できるのだろうか……

……なんてことを考えながら少々物足らないオムライスをかき込んだのでありましたとさ。





へ、クリスマス?なんすか、それ?





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