一安心していい?

パティ・スミスのJust Kids感想を書いたが、yomoyomoさんに「YAMDAS現更新履歴」にて拙ブログに触れていただいた。
「翻訳が進んでいる」という点では一安心だが、進展している気配がないのは気になるところ。

ふと思い出してしまったのが青山南さんの『ピーターとペーターの狭間で』というエッセイ集。ちょうど引っ張り出せる位置にあったのでぱらぱらと読み返してみた。

青山さんはここでマイケル・ハーの『ディスパッチズ』の翻訳が完成できなくて苦しんでいることを書いている(「ヴェトナムのゴム判」)。
『ディスパッチズ』はヴェトナム戦争をニュー・ジャーナリズムの手法で描いた傑作であるが、当然ながら(?)fuckやらfuckingが連発される。編集者は青山さんの尻を叩くために「オマンコ」というハンコを作り……というお話なのだが、気になったのはいったいいつから『ディスパッチズ』に取り掛かっているのかというところ。
こんな部分がある。「『地獄の黙示録』も完成までなんだか手間取ってみたいですね。この調子だと、公開といっしょに翻訳本をだせるかもしれませんよ」。ハーは『地獄の黙示録』にも協力しているのでこういう会話が交わされたのだろう。
そしてそれがどうなったかというと「なにが「公開といっしょ」だ! いまじゃもう『地獄の黙示録は名画座ですらめったにかからなくなってしまったではないか」とのことであります。
『地獄の黙示録』がなんとか完成にこぎつけ公開されたのが1979年(日本公開は翌年)。そして青山さんがこの文章を「本の雑誌」に書いたのが85年。

単行本にする際に加筆した後日談として「そしていま、一九八六年末の現在……まだ完成していない」。さらに文庫化される際の加筆としてこんなオチになっている。「さらにいま、一九九一年夏の現在、『ディスパッチズ』は筑摩書房からめでたく刊行されている……でも、訳者はぼくじゃないのね」。ちなみに『ピーターとペーターの狭間で』はちくま文庫から出ている。

『ディスパッチズ』の翻訳本を手にできるようになった今となっては(というか今では絶版のようだけど)笑い話かもしれないが、70年代後半に「お~、『ディスパッチズ』の翻訳ついに出るのか。すんげえ楽しみ」なんて思ってた人にとってはこれ、とてもじゃないが笑えないネタだったんだろうなぁ。

Just Kidsがそうならないことを祈っております。



プロフィール

佐藤太郎(仮)

Author:佐藤太郎(仮)
shopliftersunionあっとhotmail.co.jp

最新記事
月別アーカイブ
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
カテゴリ
twitter
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QR