『ドラゴン・タトゥーの女』

『ドラゴン・タトゥーの女』

デヴィッド・フィンチャー監督でハリウッド版が製作されるというのを聞いてからすんごく楽しみだった作品。


原作読んでスウェーデン版を見ているもので(感想はここ)どうしてもそちらとの比較をしてしまうのだが、フィンチャーや「ハリウッド」の良さというものが出ていたのではないかと思えた。

ミステリーというと雰囲気が重要なのだけれど、最初は少し急ぎ足っぽくてカットごとの余韻などがなく、『ソーシャル・ネットワーク』で味をしめてこういう感じなのかいなとちょっと不安になったのだが、徐々にそれも落ち着いてきて中盤以降はいい雰囲気だった。

僕はフィンチャーという監督はかなり好きなのだけど、例えばキューブリックあたりと比べると、「哲学的」な深みを感じさせるような監督ではないと思う。これはけなしているわけではなく、普通こういうタイプの監督ってぱっと見は「スタイリッシュ」であっても、「だからなんなんだよ」という感じになってしまうことが多いのだが、フィンチャーはそこらへんのバランスが良く、適度の「アート性」と「大衆性」との間にうまくおさまっているような気がする。

この作品といえば予告編の段階からカレン・Oの「移民の歌」が非常に話題になっていた。本編ではタイトルバックに使われていて、ここでもうガンあがり!という感じだったのだが、冷静に考えてみればあの映像が作品の中に有機的に溶け込んでいるかといえばやや疑問にも思える。
ウディ・アレンはあまりにシンプルなタイトルバック(ベルイマンへのオマージュ)でもおなじみだが、こういう立場から見れば無駄にして余計と写るかもしれない。言ってみれば途中にミュージック・ビデオが挿入されているようなもので、いくらそのミュージック・ビデオの出来が良いからといって映画としてはどうなのか……という感じにあまりならないのが、個人的にフィンチャーの好きなところなのかもしれない(シンプルなのも好きなのですが)。カッコいいんだからいいじゃんってね。

原作の感想でも書いたが、そもそも原作自体が決して深遠にして難解というような「文学的」なものではなく、社会派的な面も持ちつつ、スゴ腕ハッカーが登場というミステリーとしては反則気味の設定からもわかるように、あくまでエンターテイメント作品であった。そこらへんもフィンチャーの作風とよく合っているのではないだろうか。

スウェーデン版は三部作の製作があらかじめ決まっていたこともあって、後作品の複線をかなり張っているのだが、そこらへんが一本の作品として見るとやや脱線気味だったようにも感じられた。ハリウッド版でも続編の製作も十分に行けるネタふりがあるのだが、単独の作品としてもうまくまとめられている。
「ハリウッドでリメイク」というと、「わかりやすいエンターテイメント」へ改悪されることが多いのだが、原作はもともと十部作(だったっけ?)くらいの構想があったということで、風呂敷を広げすぎていた観もあったので、むしろきびきびとまとめたという点ではこれもハリウッド流とよく馴染んだのではないかと思う。後半に関してはかなり大胆な改変が施されているのだが、余計なエピソードを削るという点ではまあぁ悪くなかったのではないかと思えた。原作を未読の人には多少わかりにくかったり強引と思えるところもあったかもしれないが(リスベットの行動などは少なからず意味不明だったりあまりに唐突に感じた人もいただろう)、しかしそれほど穴を感じさせない脚本に仕上げてあったのではないだろうか。

原作では二作目以降「キャラのインフレ」がかなり深刻になってくるし(敵も味方もなんでもありで同時にかなりマヌケ)、スウェーデン版映像化ではいささか説明臭い冗長さが否めなかったので、ハリウッドで続編が作られるとするとここらへんをどう料理するかも楽しみにしたい。

この作品でなんといっても注目されたのがリスベット役だが、ルーニー・マーラーに決まったという時は大丈夫かいなという感じもしたのだが、よく頑張っていたと思う。
ただ「あれだけ個性的な役をどう演じるか」というより、あれだけ個性的なキャラだと、覚悟と演技の基礎体力さえあれば誰がやっていても似たようなものになったのではという感じもしてしまった。スウェーデン版のノオミ・ラパスとどちらがはまっていたかについては、個人的にはそれほど差がなかいかなぁという感じだった。

あと一部で話題になっているモザイクだけど、あそこまで下手でひどいともう笑うしかないって感じで、かえって不快ではなかったりして(もしかしてそれが狙い……なわきゃないけど)。


作品の質という点ではフィンチャーの特A級の作品(『セブン』『ファイトクラブ』『ソーシャル・ネットワーク』)と比べると落ちる観は否めないが、それでも十分に楽しめた。前作の『ソーシャル・ネットワーク』と比べると、フィンチャーらしさということではこちらかなという気もする。


この予告編はほんとたまらんわ。



このインタビュー見るとやっぱりよう頑張ったと思っちゃうなぁ。






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佐藤太郎(仮)

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