『99%の反乱』

サラ・ヴァンゲルダー + 『YES!Magazine』編集部編 『99%の反乱 ウォール街占拠運動のとらえ方』




本書の出版を知った時、訳、解説者の名前を見て意外な気がした。
「皮肉屋」について触れた箇所があったが、山形浩生といえばまさにような「皮肉屋」と思えたからだ(僕は山形の熱心なファンというわけではないので、そういう人からすれば意外なことではないのかもしれないけど)。

本書は「ウォール街占拠の絶頂期に緊急出版された、ある意味では檄文集である」(p.138)と「訳者解説」にあるが、それだけにその高揚感が伝わると同時に、後になって読むと無力感も増幅されてしまうかもしれない。

「ウォール街占拠運動」では「仕掛け人」として『アドバスター』誌がよく言及されるが、本書を読むとそれだけに留まらず、様々なオーガナイザーが参加していたことがわかる。自然発生的にわらわらと人々が集まってきたのではない。これは別にネガティブな事実ではないだろう。数千人、時には数万人規模のデモや集会を行うには、このようなオーガナイザーの存在は欠かせないだろう。

しかしまた、「ウォール街占拠運動」はそのようなオーガナイザーの予想をはるかに超えたものとなったのも事実である。
本書に収録されている様々な立場からの文章を読むと、参加者の間に芽生えた共同体意識や、「人民マイク」(拡声器の使用が禁じられているために人の声をマイク代わりにして言葉を伝える)に代表される連帯の印など、なぜこの運動がこれだけの広がりとインパクトを持ったのかというが「ミクロな観点」からよくわかる。

一方で、山形が指摘しているように、「マクロ」の問題となると心持たなくなる。「いきなり「企業が悪い」「われら99%」となってしまい、知らない人には間をすっ飛ばした一般論に見えてしまう」(p.139)。
「訳者解説」では「世界的な自由化と格差の拡大」、「サブプライム問題から金融危機へ」という流れが概観されている。
サブプライム問題について、「強欲な金融セクターと、格差を心配する良心的な社会派との利害は一致していたのだ」(p.144)というあたりは「いかにも山形浩生っぽい」と思われるかもしれないが、全体としては占拠運動に参加した人や、シンパシーを憶えた人にとっても受け入れられるものであろう。

解説で面白かったのは、「いまにして思えばウォール街や金融セクターが、サブプライム住宅ローンをもとにした論外な金融商品の組成と販売に血道を上げたという事実は、金融セクター自体の活動の場がすでに狭まりつつあり、かなりいかがわしいものに手をださなければならない状態にすでに陥っていた、という証拠でもある」(p.148)という箇所。こういう視点は一般にはあまり語られていないかもしれない。飽くことのない強欲さだけではなく、ある意味ではそこまで追い詰められていたというところもあるのかもしれない。。

解説の中で、スティグリッツがウォール街占拠運動に「直接参加」し、クルーグマンも「全面的な賛意」を寄せ、さらには「かの英『エコノミスト』誌ですら、この運動に好意的」だったことが紹介されていて、映画『インサイド・ジョブ』にも触れてある。
『インサイド・ジョブ』中でジョージ・ソロスは金融の野放図な規制緩和に警鐘を鳴らしていた(……と思う。ざっと流し見ただけなので違ってたらごめんなさい)。
またウォーレン・バフェットは富裕層への課税強化や再配分を訴えていることはよく知られている。
言うまでもなく、これらの人々は資本主義を否定しているのではない。むしろ資本主義を守るためにこのような言動に出ていると考えた方がいいだろう。「1%」が全てを支配しコントロールするような社会では、資本主義は政治的に危うくなるのみならず、経済的にも行き詰まりを見せることだろう。
山形が、本書に多く見られる「、エコだの地産地消だの、ましてお金の廃止だの金融の禁止だのといったお題目」(p.149)を否定しつつも、おそらくは一定の共感を持ってこの本を訳したのも同じ意識だったのかもしれない。

解説の最後はこう結ばれている。「日本では、政府および日本銀行のデフレ無策がじわじわと失業を高め、その被害を若年層が最も強く受けることで、社会と経済の将来性がなし崩し的に骨抜きになりつつある。この状況をまえに、ぼくたちは何をすべきなのか? 本書自体がその答えを提示しているとは思わない。しかしその根底にある不満は、決してぼくたちと無縁のものではないのだ」(p.150)。


最後にどうでもいいことだけど、「ウォール街占拠のウェブサイトを見て、ラジオヘッドのコンサートがあると知って来た者もいるだろう」(p.53)というのは、OasisがオアシスならRadioheadもラジオヘッドという表記にすべし、という訳者の主張なのだろうか……(三人の共訳なのでここを誰が訳したのかは不明。まあ訳者というより編集者か校正がチェックすべきところだろうけど)。
意地悪なこと書いてごめんなさい。電車の中でなぜかここがツボにはまってしまい、笑いが止まらなくなって恥ずかしかったので書いちゃいました。





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