『居心地の悪い部屋』

岸本佐知子編訳 『居心地の悪い部屋』




まぶたを縫い合わせる物語(ブライアン・エヴンソン「ヘベはジャリを殺す」)から始まるこの「居心地の悪い気分にさせられる」アンソロジーを寝る前に読んでいくというのはいかがなものかと思いつつも、楽しく居心地悪くさせてもらった。

ジュディ・パトニックの「来訪者」は母親あるあるネタとしても楽しいが、ありふれた日常がぐにゃりと曲がりつつそれを受け入れてしまうがゆえに受け入れられないようなねじれた感じがよい。
ルイス・ロビンソンの「潜水夫」はざらりとした暴力の感覚を予感として漂わせつつ……というのはどことなくカーヴァーを思わせる。
突然の暴力の噴出といえばジョイス・キャロル・オーツの「やあ! やってるかい!」もさすが。
レイ・クサヴィッチの「ささやき」は自分のいびきを録音してみるというおバカな話からぞっとさせるようでまたユーモラスでもある。

最後を飾るはケン・カルファスの「喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ」
ストライクが入らなくなったピッチャーの話の始まり方はどこか山際淳司っぽいが、ここから次第に幻想の度合いを深めていく。
アメリカではマラマッドの『ナチュラル』だったりロスの『素晴らしいアメリカ野球』など、「純文学」で野球を扱った小説は多いが、このカルファスの作品を読みながら、これと似たようなテイストのリアリズム的な始まり方から幻想的な展開となる野球小説をどこかで読んだ記憶があるのだが、それがなんなのか思い出せない。う~む、こういうのも居心地が悪いのだが……。

『変愛小説集』は岸本佐知子印たっぷりの傑作アンソロジーだったが、やはりこちらも岸本的世界を堪能できる。居心地の悪い小説を探し読むのは大変かと思うが……いや、楽しそうだな。というわけでこちらもぜひシリーズ化してほしいのであります。



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佐藤太郎(仮)

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