メディアの感性

19日の夜にぼーっとネットを見ていたら、安住財務大臣が国会で新聞の社説が消費増税を支持しているのだから増税は正しいという趣旨の答弁をしたというのが目に入ってきた。いかにも安住が言いそうだと思う反面さすがにこれはネタじゃないのかとも思ったのだが、本当にこのようなことを言っていた。

朝日にはこのような記事が載っていたが(財務相「新聞社説は消費増税で一致してる」)、朝刊の政治面ではなんとそのすぐ下に、公明党の松あきらが新聞や書籍への軽減税率の適用を求め、野田も「検討する」と語ったという記事が載っていた(軽減税率、首相「検討」 参院消費増税関連特別委)。
新聞などへの軽減税率の適用についてはこちらを見ていただければわかるように渡辺恒雄がおおっぴらに求めている。

朝日の読者はこの紙面を見てどう思ったのだろうか。
「これは新聞と財務省の癒着を示すものだ」と思った人もいたかもしれない。あるいは「これは朝日内部の消費増税反対派が二つの記事を並べることで癒着を暴露したのだ」と思った人もいたかもしれない。ほとんどの読者が二つの記事を批判的に結びつけることはなかったのかもしれないけど。


財務省がなぜこれほどまでに消費増税にこだわるのかについては様々な憶測、もっといえば「陰謀論」がある。その中の一つが軽減税率をめぐってである。
消費税が高税率になれば「生活必需品」への軽減税率を求める声が高まる。しかし何をもって生活必需品とするかは恣意的な線引きにならざるを得ない。これこそが財務省の狙いであり、裁量の余地が広がることで利権が生まれる、というものである。
新聞がなぜこれほど増税を煽るのかについてもこの文脈で説明する人がいる。すでに新聞と財務省の間では新聞に軽減税率を適用することで話がついており、その見返りとして新聞は増税を支持するというものだ。

前者については主要な理由ではないだろうがそういう側面もあるのかもしれないとは思うものの、後者の「陰謀」については真に受けていない。新聞がなぜこれほど消費増税を煽るのかといえば、それは本気で増税が必要だと信じているからなのだろう。これは野田についても同様で、政策的にも政局的にもまるで合理性を欠いている増税に異様なほどの拘りを持つのは、これが国のためになると本気で信じているのだろう。そしてなんと非難されようともお国のために正しいことを行っているという自分の姿を想像して、それにすっかり酔っているのだろう。
もちろんこのような「本気」の影には財務省による誘導があろうが。


突然話を別方向に飛ばすが、原発再稼動反対デモについて、これがある程度の規模になった後も新聞、テレビはなかなか触れることがなかった。これについて「原子力ムラおそるべし!この状況でもマスゴミに圧力をかけて……」というような反応をしていた人もいたが、これもそういうことではないのだろうと思う。朝日や東京新聞などは反(でも脱でもいいが)原発の記事を多く載せているので、これらの新聞がこのデモにだけ圧力に屈したと考えるのは不自然すぎる。なぜ報道されなかったのかといえば、おそらくは報道する価値がないと判断しただけではないだろうか。
首相官邸前であれだけのデモが起こっていて、新聞、テレビの記者が誰一人気がつかなかったというのはまず考えられない。このような事が起こるのは数十年ぶりのことであろうし、その主張の是非ではなく現象だけを捉えても十分に報道する価値があったと思っているが、新聞、テレビの記者はそうは感じなかったのだろう。

最近は日本でもメディア内部の人で実名でツイッターなどをしているケースが増えてきたが、それを見て感じるのがメディア内部の人(とりわけ新聞記者)の独特の「感性」、あるいは感性の鈍さである。
メディア批判がかまびすしいが、中には事実に基づかない批判、それもあまりに荒唐無稽なものも多い。そのような事実誤認を正していくことは大いにやるべきだとは思うものの、同時になぜ自分たちがそれほどの不信感を持たれているのかということにも向き合ってほしいと思うのだが、残念ながらそういう人はあまりいないような印象を受ける。

メディア外部の人が陰謀論を嘲笑するのと、メディア内部の人が陰謀論を嘲笑し、それが受け入れられる素地を軽視することではまるで意味が違うと思うのだが、そういうことをどうもよくわかっていないのではないかと思ってしまう。記事を読んでこの記者はまともそうだな、と思っていた人に「あぁ、こういう反応をしちゃうのか」とがっかりすることも多いのだが、逆に考えると日頃ろくでもない記事(政治部の記者の政局記事のようなもの)ばかりを書いている人がどういう「感性」を持っているのかと想像するとおそろしくなる。


脱線しすぎてしまったが、朝日の安住の社説発言と野田の軽減税率発言を並列するような紙面構成は、何らかの意図が働いていないのだとすると(おそらく働いていないだろう)、まさにこのような感性の鈍さを表すもののように思えてくるのでありました。こういうのが未だに通用すると思っているというより、疑問すら抱いていないのだろうなあ、と。


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佐藤太郎(仮)

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