心にしみるミルの『自由論』

『ロールズ政治哲学史講義』




ロールズが1970年代後半から90年代前半にかけてハーバード大学にて行った講義から成っている。
ロールズは「序言」でこう書いている。「私は、民主的な立憲主義の伝統からリベラリズムを眺めたときの正義の政治的構想を表現するものとして、リベラリズムのより中心的な特徴を特定するよう努めている。この伝統の一つの構成要素である社会契約論は、ホッブズ、ロック、ルソーによって代表されている。別の構成要素である功利主義は、ヒュームとJ・S・ミルによって代表されている。これに対して、社会主義ないしは社会民主主義の構成要素は、マルクスによって代表されている。マルクスについてはおおむね、リベラリズムに対する批判者とみなすことになるだろう」。

本書はこれらの思想家の入門講義としても読めるが、ちょうど時期的には『正議論』刊行後から『公正としての正義 再説』の構想を練っているあたりなので、ロールズ自身の著作を読むうえでも興味深いものとなることだろう。


それにしても現在の日本で本書を読むと、『Ⅱ』にて取り上げられているミルの『自由論』に注目せずにはいられない。

『自由論』第一章より。「人民の意志……とは、実際には、人民のなかで最も数の多い、最も能動的な部分の意思、すなわち多数者、言い換えれば自分たちを多数者として認めさせることに成功した人々の意思を意味する。したがって、人民がその一部を抑圧しようとすることはありえうるのであり、これに対しては、他のあらゆる権力の濫用に対してと同様に、十分な警戒を払う必要がある」。
ロールズはこれに、「このようにミルの関心は、トクヴィルが彼に先だって注意を喚起した、いわゆる「多数者の暴政」にあります」とコメントしている。

ロールズは「ミルは、「優勢な意見や感情の暴政」に対しても等しく関心をもっていたことに注意しましょう」として次の箇所を引用している。
同じく第一章から。「社会が、法的刑罰以外の手段を用いて、それ自身の考えや慣行を、それに同意しない人々の行動の規則として押しつけようとする傾向や、社会のやり方と調和しないいかなる個性の発達をも阻止する傾向……。個人の独立に対して集団の意見が正当に干渉しうることには限界がある。その限界を見出し、それを侵害から守ることは、人間的事象の望ましい状態にとって、政治的専制からの防衛と同様欠くことのできないものである」。

さらにロールズは「この点でミルは、社会において優勢な道徳的意見に特有の多くの欠点を強調します」として、やはり第一章からこのような引用も行っている。
「人間の行動の規則について人々にその意見をもたせている実践的原理は、各人の心のうちにある感情、つまり自分や自分の同感する人々が、彼らにそう望むようにあらゆる人々は行動しなければならないという感情である」。

ロールズは「もちろん、誰も「自分の判断基準が自分の好みだとなどと認めたりはしない」」と引用を続け、「しかしミルは、それが真実だと主張します」としている。
これも第一章から。「ある行動についての意見は、理由によって支持されていないなら、一人の人間の選好としての価値があるにすぎない。また理由が挙げられるとしても、それがたんに他の人々によって感じられる同様の選好に訴えるものにすぎないとしたら、それは依然として一人の代わりに大勢の人々の好みだというだけのことである」。
そしてロールズはこうコメントしている。「しかしほとんどの人にとっては、他者の選好によって支持された自分自身の選好が完全に満足のいく理由であり、実際、それが、自分の道徳的確信を支持するためにもっている唯一の理由なのです」。


その他にもミルを扱った章はベンサムとミルの違いなどいろいろと考えさせられる。
ちなみに僕は『自由論』はずっと昔に雑に目を通しただけでまったく記憶に残っていないのだが、それはここに書かれていることがあまりにも当たり前のように思えたせいだったのかもしれない。まさか2012年にもなって、『自由論』が心にしみるようになってしまうとは。
このところ19世紀化する世界というのを痛感させられるが、まさにその極端な例として日本があるという、泣くに泣けない状況なのですよね。

サンデル読んでる人の十分の一でもロールズを真剣に読んでくれていたらよかったのに、なんてことを思いつつ。


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佐藤太郎(仮)

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