ジャック、リボー、ギヨー

山口昌男編 『林達夫座談集 世界は舞台』




林達夫を囲む形で1970年代に断続的に行われた山口昌男、大江健三郎、中村雄二郎、古野清人らとの鼎談に加え、林の死去後に行われた鼎談も収録されている。これは雑誌などにも未発表のものを集めたということなのかな。そのせいかよくいうとリラックスした雰囲気、悪くいうと『思想のドラマトゥルギー』などと比べると散漫なものともなっている。


1972年に行われた鼎談にはこんな箇所がある。

山口 私はフランス語の手ほどきは山田さんの息子の爵(ジャック)さんに受けました。駒場あたりの先生は結局みんな二代目なんですね。爵さんと、それから武者小路実光さん、もう一人は梅原成四さんです。三人共習った先生はいかにも二代目という感じでした。
古野 山田さんは茉莉さんと別れてあとの奥さんをもらった。その奥さんがついて図書館にきたことがある、子供と。
林 あとの奥さんの子供というのはいま平凡社にいますよ、一人。ジャックみたいに、ああいう名前ではないけれども。
古野 それは山田さんが森鴎外に影響されてジャック(爵)とつけた。奥さんが茉莉なんだな。
林 名前じゃやっぱり鴎外と波多野完治君のせがれの名前だな、目立つのは。
古野 そうそう。
林 デュマ君というのもいるんじゃないか、いないかな。
山口 上のほうが里望君で、下のほうが……。
林 きのう何かに出ていたよ、テレビに。あれは何という名前だっけ……。
古野 誼余夫。
林 そうだ、誼余夫。
古野 獨協大学にいたらちょうどやってきた。兄貴のほうは僕は小さいとき知っておるが、君は知らなかったと言ったんだけれど……。
林 ああいう名前つけると年がわかるね。ギヨーの翻訳が出たりなんかしたときだし……。
山口 早稲田にいる英文学の森常治氏もそういう系統でジョージなんでしょう。
(pp.137-138)


「爵」の字は正確にはこれではないのですが変換できないものでこちらを参照。
「里望」は「りぼう」、「誼余夫」は「ぎよお」と読みます。

林も触れているように森鴎外の子どもたちの名前はすごいものがあるが、インテリの人たちが子どもにこういった名前をつけて、その子どもも知的な職業につくと(「里望」さんも「誼余夫」さんもどちらもウィキペディアに項を立てられている学者)そういうものかと思ってしまうのだが、別にインテリ云々に限らず明治以降はこういった傾向の名前をつけたがる親が一定の割合でいるのだと考えたほうが昨今の「キラキラネーム」問題も理解しやすいのかもしれない。
そういえば『パンとペン』でも触れられていたように堺利彦も娘の名前を「マーガレット」から取って「真柄」としていましたね。

ちなみに林達夫の息子は長男が巳奈夫、次男が杲之介で、まあそれほどぶっとんでるわけではないが、山口昌男は本書でも触れられているように長男を類児、次男を拓夢と名付けている(p.10)。


もし自分が親になったら子どもの名前はどう育とうとも対応できる平々凡々なものにしたいと思ったりするのだけれど、実際に子どもを持ったらまた違った思いというのが湧いてくるのだろうか。




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