『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』

『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』




ローゼズの熱狂的なファンなのかというと、そこまでとは言えないだろう。しかしそんな僕のような人間でも、再結成記者会見であの四人が顔を揃えた瞬間というのは感慨深いものがあった。ロック、ポップス史にはセールス云々ではなく、存在自体が「特別」な人たちがいるが、ストーン・ローゼズもそのような存在であることに異論のある人はないだろう。


本作は再結成記者会見、リハーサル、ツアー、そしてヒートンパークでのライヴまでの密着に、過去の映像に回想インタビューを交えた構成となっている。

85年ごろのハシエンダでのライヴ映像もあったが、あの時このバンドを見ていた人たちの中で、数年後にあのような存在になると予想した人がどれだけいたことだろうか。
映画では触れられていないが、ローゼズの面々はジョニー・マーとは年齢はほぼ同じで、ジョニー・マーとはスミスを作る前からの知合いだったことを考えると、マネージメントの混乱等諸々の事情もあってファースト・アルバムを出すことができたのは遅咲きといってもいいような歳に近づいてからのことだったのだが、後知恵的にいうならこれが幸いしたということになるのかもしれない。

このファースト・アルバムのレコーディング中のふざけあっている映像は割りと有名なのでどこかに落ちてると思うが、二十代半ばにしては小学生かよという微笑ましさであり、それだけに後の歴史を知っていると切なくもなってきてしまう。

再結成後のリハーサルでもお互いに軽口を叩き合い、イアンが大阪のおばちゃんも真っ青のアニマルプリントの服を着ていたのをレニがいじり、イアンがちょっとはにかんでいるところは可愛らしい。しかし再結成ツアー中にレニがアンコールを無視して一人会場から立ち去るという事件が起こってしまう。レニはモニターの不調に苛立っていたようで、確かにしきりにイヤホンを気にする様子が映像にとらえられている。とはいえ普通ならこういったトラブルはツアーにはつき物であろうことを考えると、これ以前から何らかのフラストレーションがたまっていたのかもしれない。ブーイングが飛び交う中ステージに戻ったイアンは、「不満は俺にぶつけてくれ」と言いつつも、レニを批判する言葉も口にしてしまう。これ以降カメラは楽屋裏の様子を撮ることはできなくなり、ヒートンパークでの公演すらも危ぶまれてしまう。

ファースト・アルバム発表まで時間がかかったことが、かえって時代の潮流とローゼズとがこれ以上なくシンクロするという奇跡をもたらした。一方で、もしファースト発表後に訴訟沙汰に時間をとられずにそのままの勢いでセカンドに取り掛かっていたなら、ということを想像せずにはいられないように、ファーストからセカンドまでの長すぎた時間は今度はバンドに不吉な影を投げかける。
再結成ツアーでレニとイアンが衝突したが、セカンド発表後にレニはイアンと対立し、レニはそのまま脱退してしまう。このあたりが重ねて描かれるために、レニが単に癇癪を起こしたというだけではない恐怖心を関係者に引き起こしたことが映像からも伝わってくる。もちろん結果的にはヒートンパークでは四人揃って素晴らしいパフォーマンスを披露することになり、他人事としてはこれもローゼズらしいというようなことを思ってしまうのだが、周りの人間にとってはたまったものではなかっただろう。

本作はローゼズについて基本的知識を持っていることが前提とされているので、よく知らんが昔人気があったバンドなんでしょ、といった感じでこの作品を見るとこのあたりはあまり伝わらないかもしれない(例えばシルバートーンの社長襲撃事件はファンにとっては常識であろうが、このあたりも詳しい説明がなくニュース映像が挿入されるだけなので、事情を知らない人には何が起こっていたのかよくわからなかいかもしれない)。言い方を変えると、ファン目線で貫かれた作品だとしてもいいだろう。

監督自らが登場するが、ローゼズ側から依頼されてこの仕事を引き受けることになった時のことを思い出し、電話を受けたタクシーの中で子どものように泣きじゃくったと語っている。肩慣らしにフリー・ギグを行うのだが、この時の入場リストバンド争奪戦の模様がかなり長くあって、おっさんの脇汗とかどうでもいいんですけど、という気にならないこともなかったのだが、これも自分がファンであるからこそ、ファンがどれだけローゼズ復活を待ちわびていたのかを描きたかったということなのかもしれない。そしてその気持ちは十分に伝わってくる作品となっている。


一つ、不満というほどではないが、「フールズ・ゴールド」もいいのだが、あそこはやっぱり「レザレクション」じゃないのかなあと思ってしまった。途中であそこに「フールズ・ゴールド」を持ってくるフリのようになっている会話がイアンとレニの間であったのだが、編集中にこれだ!となったのかな。

確かにこれもすごいけどね。






あとエンドクレジット中には来日時の映像もあります。「コンニチワ」と言ってカメラをホテルの部屋に招いたイアンがすげえんだぜ、と見せるのはドアを開けると自動的に便座の蓋が上がるトイレ。新幹線(?)で爆睡する姿も拝めます。

東京では新宿シネマカリテで15日(金)までとなっております。


ローゼズに詳しくない人はこのあたりを読んでから見るとより楽しめるかと。







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佐藤太郎(仮)

Author:佐藤太郎(仮)
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