野球人気その2

2.読売グループの自滅

1の理由のように、擬似日本代表であった巨人戦の視聴率が
下がり始めるのは避けがたい流れであった。
しかしここ数年の急速な視聴率の低下は読売グループの自滅であったといえる。

その代表格が93年に導入された逆指名とFA制である。
ご存知のようにこれらのシステムは渡辺恒雄が強引に導入したものである。
氏の発想ではこれで巨人に有力選手が集まり、巨人人気、
ひいては読売グループの販売戦略も安泰だということだったのだろう。
よく知られているように渡辺恒雄はもともと野球ファンではない。
つまり彼はファン心理というものをまるで理解していなかったのだ。

逆指名を考えてみよう。
某外野手は発表の当日まで「ヤクルト入り確実」と言われていた。
(この例を出すのはもちろん個人的恨み節である)
ところがなぞの仏頂面記者会見で巨人入りを表明。
のちにこの決定の裏にはこの選手の父親の事業での多額の負債を
読売グループが肩代わりしたことがあったとされる。
その額実に16億円!
もちろんこれが事実かどうかはわからない。
しかしこのような報道があった選手を心から応援することができるだろうか。

公平のために言っておくと、おそらく「裏金」は程度の問題はさておけば
全球団が使っていたことだろう。
逆に言えば有力選手を見るたびに
「あぁ、この選手は金でこの球団を選んだのだな」という印象を持ってしまう。
これが実績のある選手ならともかく、これからプロ入りしようという選手が、
しかも裏で億単位の金が動くとなれば、
感情移入しづらくなるのは避けられないだろう。

ではFAはどうなのか。
一般論として選手が移籍するというのは、
その選手や球団のファンにとって困惑させられることである。
そして、何よりも巨人ファンというものは
「エースと4番は生え抜きの日本人でなきゃ」というような
保守的感覚の強い人が多いように見受けられる。
コアな巨人ファン以外は、落合や広沢や清原や小笠原etcを
本当に受け入れていたのだろうか。

結果を見て巨人が勝っていればうれしいという人も、
試合を見てのドキドキ感が薄れていくことが多いのではなかったろうか。

そして何よりも、アンチ巨人という名の巨人ファンを白けさせたことが
深刻だ。
昔はローテーションを崩してでも、他球団に負けがかさんでも、
とにかく巨人だけには勝て、というセリーグのチームのファンが多かった。
もちろん今でも、さきほどの巨人ファンの裏返しに
巨人が負ければうれしいという人は多い。
しかし彼らは昔のような感覚で負けを願っているだろうか。
むしろもう勝手にやってろよ、という呆れのほうが先行しているのではないか。

この傾向を決定付けたのが外国人にまで手を出すよになったことだろう。
グライイシンガー、ゴンザレス、クルーン、ラミレス、イ・スンヨプ。
これはいったいどのチームなんだ、という感覚は巨人ファン、アンチ巨人に
共通するものであろう。

ここでメジャー・リーグを見てみよう。
「アメリカ人はドライだから移籍を気にしない」などと言う人がいるが、
現在ヤンキースで最も人気があるのは、成績としては突出していない
デレク・ジーターである。彼が生え抜きでなかったらこういっただろうか。

さらにメジャーはNFLなどとくらべると明らかに運営に失敗している組織であろう。
FAを導入する以上資金力のあるチームに選手が偏る事態は
当然予想される。
それを調整するのがサラリーキャップ制である。
しかしメジャーは選手会の猛烈な反対でこの制度の導入に失敗した
(その代わりに「贅沢税」が作られた)。

日本のプロ野球界は本来はこの教訓を他山の石とすべきであった。

残念ながら野球界はプロもアマも金権体質が強い。
しかし逆指名制導入にあたってなんら対策をとらないどころか、
罰則規定すら作らないなど事実上それを奨励すらしていた。
FA制がもたらす課題はすでにアメリカで明らかとなっていた。
しかし全くもって利己的な動機からシステムをいじろうとしていた人たちは
まともなシュミレーション一つしなかった。

渡辺戦略は全くの机上の空論であり、
結果としてはとてつもないファン離れを招いたのは明らかである。
これが読売グループの自滅である。


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佐藤太郎(仮)

Author:佐藤太郎(仮)
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