『ゼロ・グラビティ』

『ゼロ・グラビティ』



今までIMAXで映画を見たことがなかったし、それほど心惹かれるものがあったわけではないのだが、とにかくこの作品はIMAXの3Dで見てこそだという評判を聞くもので、IMAX童貞を捨てるにはこれしかないかということで行ってまいりました。

ユナイテッドシネマとしまえんで見てきたのだが、西武線で豊島園駅に向かっていると練馬で僕以外の乗客がみんな降りてしまい、車内に一人残されてしまった。宇宙の果てを見る前に地の果てにでも連れていかれるのかと、 こういうのって不安になってしまいますよね。サンドラ・ブロックの恐怖に比べるとかわいいものですが。


結論からいうと、全編に渡ってとにかくもうすんごい映像が繰り広げられ、どのような趣味嗜好を持つ人間であろうと間違いなく「十分に元を取った」となることは請け合いなので、見に行ける範囲内にIMAXの劇場がある方はぜひともそちらで、と思う。

ということで基本的にはこの作品には満足であった。
アルフォンソ・キュアロン監督の長編としては前作の『トゥモロー・ワールド』も脅威の映像世界が繰り広げられており、これも度肝を抜かれる体験ではあったが、物語が映像に奉仕しているだけのように感じられてしまい、作品全体としては必ずしも好みとはいえなかった。その点『ゼロ・グラビティ』はストーリーとしてはシンプル極まりないものである分、安心して見る事ができる。

ただ贅沢をいうと、「基本的には」と付けたようにいくつか不満がなかったわけではない。
例えばある場面が子宮の中の胎児の隠喩になっているという指摘を見る前に知ってしまっていたのだが、もっとナチュラルにやっているのかと思いきやこれみよがしにやっているのはもう一つだなあと感じてしまった。こういうのって気付く人だけ気付けるようにさらっとやってくれた方が個人的には好みなのだが、ここらへんを抑制できないところが今一つキュアロンとは趣味が合わないところかもしれない。
それから音楽などについても、もう少し控え目なほうがよかった。サンドラ・ブロックがある発見をする時にお化け屋敷風ともいえる音を加えてしまっているのにはややしらけてしまう。サンドラ・ブロックの過去というのも、感情移入を誘うという点で入れておきたかったのだろうけど、これも本当に不可欠なものであったのだろうか。試練、挫折、復活という流れは映画における物語としては定型ではあるのだが、やや安易にも感じられてしまう。
このあたりは趣味の問題でもあるので、演出や設定が全然気にならなかったという人も多いのだろうけど、個人的にはあそこまですごい映像世界を作り上げたのならもっとストイックに徹してほしかったところでもある。

もともと僕はキューブリックの『2001年宇宙の旅』やタルコフスキーの『惑星ソラリス』がすごく好きで、HALの「ストップ、デイブ」に重なる呼吸音や、シャンデリアの響きがたまらないと感じる人間なもので、そちらに引きずられすぎということなのだろうけど。『ゼロ・グラビティ』はこれらの作品よりはどちらかといえばロン・ハワード監督の『アポロ13』の方に近いものであり、そこらへんを求めるのはお門違いでもあろう。

そういえばジョージ・クルーニーってソダーバーグ版『ソラリス』にも出演してましたね。タルコフスキーのファンとしてはあれはないよなあという感じだったのだが、『ゼロ・グラビティ』では反則レベルの恰好良すぎな役になってます。

とまあ、ちょっとグチグチ言ってしまったが、とにかく無重力好きにとってはたまらない作品であることは間違いなしです。結構ハードルを高めてしまっていたのだが、映像としては部分的ではなく全面的にあれが繰り広げられるというのは期待以上のものではありました。







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佐藤太郎(仮)

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