野球人気その3

3.テレビ局の自滅

プロ野球の視聴率が低下した最大の理由はメジャーリーグにある。
といっても日本の野球ファンがメジャーに取られたのではない。
だいたい野茂の渡米以降、日本にメジャーファンが増えたのだろうか。
答えはノーだ、と言ってもいいのではないか。

野茂渡米以降メジャー情報というのがすっかり偏ってしまった。
僕はそれにうんざりしてメジャー情報を積極的にあさるのを
ここ数年辞めてしまっている。

確実に増えたのは、メジャーファンではなく
「メジャーで活躍する日本人」のファンである。
日本人は「世界と戦う日本人」が大好きである。
そして巨人が擬似日本代表の座から滑り落ちて以降、
日本人メジャーリーガーが「日本代表」となったのである。

去年までヤンキースの勝敗に一喜一憂していた人々は
今年もヤンキースを追いかけたのだろうか。
まさか一選手が移籍したからといってファンを辞めたとか……
いうことはあるのだろう。

ではなぜ野球中継の視聴率低下の原因がメジャーにあるのだろうか。
それはスポーツニュースにある。

イチローや松井秀をどう伝えているのか。
2,3打席の結果のみを写し、試合結果は画面のすみの字幕ですます。
彼らがいったい誰から、どのような状況で打ち、打ちとられたのかが
まるでわからないこともしばしだ。

たとえばセカンドゴロを打ったとしよう。
これが0対0の八回、ノーアウト二塁で相手はメジャーを代表する投手だったとする。
当然これはただの凡打ではなく進塁打として評価されるべきだ。

10対0で勝っている9回、相手は敗戦処理の投手だとする。
ちなみにメジャーの、特に資金力のない球団の
ボーダーにいる投手はびっくりするくらいレベルが低いことがある。
この場面で普通のヒットを打ったとしても特別讃えようという空気にはならないだろう。

野球というのは文脈のスポーツである。
他のスポーツと決定的に異なるのは、チームスポーツであり、
同時に個人競技的側面も持っていることである。
この両者をつなぐのが文脈である。
結果だけみればただの凡打が価値あるものとなったり、
ホームランを打っても無視されることもある。

ところが日本人メジャーリーガーを伝えるスポーツニュースでは
この文脈の部分がばっさりと切り落とされている。

昔「プロ野球ニュース」という番組に「今日のホームラン」というコーナーがあった。
もちろんホームランシーンは見ていて気持ちいい。
しかし「今日のホームラン」だけ見て試合の詳報はどうでもいいと
チャンネルを換えた野球ファンがどれだけいただろうか。

現在のスポーツニュースで行われているのはこの
「今日のホームラン」のみでチャンネルを換えるような人向けの放送である。
そして、このことを繰り返しているうちに、多くの人たちから
野球の文脈を嗅ぎ取る能力が失われてしまった。

野球が嫌いな人はよく試合が長すぎると言う。
これは文脈が理解できないために、野球というスポーツが
あまりに無駄が多い映るせいだろう。

結局野球が好きな人は地上波から離れ、
満足させてくれるCSなどに流れ
(ここなら贔屓の球団の試合をほぼ全て見ることができる)
このことがさらに地上波のテレビから野球の文脈を奪うことにつながる。

地上波にとって野球とは、もはやただ結果をチェックするだけの
存在でしかなく、わざわざ「長くて無駄」な試合などに
いちいち付き合ってなどいられない、そんな人を増やしてしまったのではないか。

日本のプロ野球が不幸だったのは、
プロ野球が一メディアグループの営業戦略の一環としてスタートを切り、
大きな存在となって以降もそこから抜け出すことができなかったことにある。
パリーグの伸長というのはそこから抜け出すチャンスなのかもしれない。
最早「気に食わなければ新リーグ結成だ」などとのたまう人間の脅しなど
過去のものとなろうとしている。

しかしその足を引っ張る存在がある。
もちろんテレビ局だ。

TBSが横浜を買収して以降いったい何をしたのだろうか。
芸能人を始球式に呼ぶ?
こんなことは野球ファンの反発こそ買っても何一つ貢献などしていない。

今回の身売り騒動はあまりにTBSがひどすぎた。
交渉内容をペラペラしゃべったり人事を勝手に進めたりと、
まともな企業なら有り得ないようなことをしでかした。
しかしこのような常識はずれはTBSに限ったことだろうか。

「野球中継のコンテンツとしての魅力の低下」。
そう言う人間こそが、まさに野球の魅力を損なっている。
たまに中継があれば「テレフォンショッキング」ばりに
芸能人ができての宣伝ばかり。
アナウンサーは絶叫こそすれ初歩的な知識もなく
盛り上げるどころか白けさせる。
あげくに最も重要な日本シリーズを中継しないとくる。
そもそも「魅力あるコンテンツ」など作ろうとしていないではないか。

今回は野球ファン目線で書いたが、
他のスポーツのファンも同様に地上波テレビ局に強い不信と不満を
持っている人が多い。
結局はすべて手っ取り早く数字に化けるものにしか興味がない。
あらゆることが、悪い意味で「広告代理店」的に進められる。
いったい誰のために何をしようとしているのか、
視聴率の名の下に視聴者が置き去りにされ、
テレビは視聴者を失い、そのことにあせり、その結果
さらに潜在的視聴者を遠ざけている。

プロ野球の辿った不幸な道は、ある意味では
巨大メディアグループの成功譚でもあった。

そしてテレビ局の衰退という物語が、
プロ野球の消滅にまでつながってしまうのだろうか。
もちろんそんなことを許してはならない。
時代は変わった。野球界は今こそ自立に向けて歩き出さなければならない。
テレビ局に頼るのではなく、自分達で道を切り開かなければならないのだろう。
プロフィール

佐藤太郎(仮)

Author:佐藤太郎(仮)
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