『恐怖と欲望』

『恐怖と欲望』



スタンリー・キューブリックの1953年公開の初監督作だが、当人はこのできが気に入らずに死蔵させてしまったといういわくつきの作品でもある。

架空の戦場を舞台に、敵陣に不時着してしまった小隊が自陣までいかに帰還するかというあらすじになっているが、哲学的箴言や重圧から精神を病む若き兵士、自分がなにも成し遂げていないという思いから敵の将軍が滞在する基地を襲撃しようという思いにかられるなど、兵士たちの姿は英雄的な戦争アクションとは一線を画すものになっている(主人公たちが二役を演じていることからもそれは明らかである)。
戦争を抽象化することによって人間の真の姿をあぶりだそうとするかのような手法は、第二次大戦を扱ったものよりも後に撮られることになるヴェトナム戦争を舞台にした作品に近いものがあるかもしれない。どことなく 『地獄の黙示録』や『ディア・ハンター』を先取りしたかのような場面もある。キューブリック自身がヴェトナム戦争映画である『フルメタル・ジャケット』を撮ることになるのだが、あれはいわば抽象化されたこの作品に現実のフレイバーをまぶしたものだとすることもできるかもしれない。

確かに習作めいた雰囲気がないわけではなく、そのあたりがキューブリックは気に入らなかったのかもしれないが、単に「あの巨匠の若き日の作品」といった資料的な興味に留まらない魅力を持っている。





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