『絆と権力』

アンヘル・エステバン、ステファニー・パニチェリ著
『絆と権力』




ガルシア=マルケスとカストロとのいささか奇妙とも思える
友情を描いたのが本書。

1948年、二人はコロンビアで
期待の政治家だったガイタンが殺害され暴動が起きる。
マルケスとカストロはその現場に居合わせたが
二人が出会うのはまだ先のこと。

1960年、ゲバラの肝いりで作られた報道機関に
マルケスは勤務し、カストロと出会うが、
二人が友情を築くのはまだ先のこと。

1971年キューバで「パディーリャ事件」が起こる。
詩人のパディーリャに「自己批判」を強いたこの事件で、
革命政権を支持してきた知識人たちが離反する。
その中にはサルトルやバルガス=リョサも含まれる。
マルケスはこの件を批判する署名に加わらず、
リョサと袂を分かち、その関係は以後も回復しない。
マルケスとカストロはこの時まだ親友ではなかった。

結局二人は1970年代半ば以降にようやく親友となる。

マルケスは何があろうとカストロ、及びキューバを擁護し続ける。
そこにはもちろん社会主義への忠誠心もあるだろうが、
同時に「権力」に魅せられてもいるマルケスの姿が浮き彫りとなる。
彼のいくつかの作品が独裁者を主人公に据えているのも
なかなか暗示的だ。

一方カストロにとってもマルケスの存在は大きい。
世界的に高名なベストセラー作家が
スポークスマンとなっていてくれるのだから……


二人の著者はカストロに対しては冷ややかで
マルケスにはシニックである。
しかしありがちなイデオロギー的に声高に批判するのではない。
おそらくは少なからぬ、いやかなりのシンパシーをも
両者に抱いているのだろう。
一見打算的とも思えるが、そうとだけは
割り切れないマルケスとカストロとの友情とも重なるのかもしれない。

僕はマルケスに対してもカストロ、キューバについても
それほど知識があるわけではない。
マルケスは『百年の孤独』といくつかの作品は読んだけど
正直はまると言うほどではなかった。
キューバ革命についてはいささか
ロマンティックな思いがあることは否定できないが、
その後の支配体制についてはさすがに幻想は抱いていない。
まぁカストロに多少の魅力を感じないのでもないが。
オリバー・ストーンの『コマンダンテ』とか見るとね。

そんな感じなので本書を読んで当然初めて知ることばかりだったし
表面的に知っていたことも、裏ではこんなことがあったのか、
ということしきるだった。
しかし野谷文昭氏の訳者解説を読むと資料的価値もなかなかあるようである。

ラテン・アメリカの政治、文化に興味のある人は
楽しめて勉強にもなるのでは。

はまらないと書いたけどやっぱりすごいことは間違いない。




カストロの伝記としてはやっぱりこれかね。





プロフィール

佐藤太郎(仮)

Author:佐藤太郎(仮)
shopliftersunionあっとhotmail.co.jp

最新記事
月別アーカイブ
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
カテゴリ
twitter
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QR