『パピエ・マシン』

ジャック・デリダ著『パピエ・マシン』
英訳はpaper machineとなります。




デリダについて偉そうなことが言えるわけありませんが
嫌いじゃないんだな。ま、よくわかんないんですけどね。


本書はデリダの講演やインタビュー、公開書簡などをまとめたもの。
上巻のハイライトはなんといっても
「タイプライターのリボン 有限責任会社Ⅱ」であろう。

ルソーとアウグスティヌスに共通する盗みの体験、
オースティンの言語行為論、そしてポール・ド・マンの
ルソー解釈へと分け入っていく道のりはまさにデリダらしいもの。

「告白」や「赦し」をめぐる考察は、
もちろん若き日に親ナチの文章を発表し、それが死後に「発見」された
盟友ド・マンを救い出す試みでもある。

デリダ、あるいはド・マンに代表される「イエール・マフィア」と称された人々は
多くの人から憎悪され、危険視された。
ド・マンのスキャンダルやファリアスによるハイデガー本の影響などで
その危険性が証明されたと主張する人もいた。

そしてデリダはそのころから「正義」へと正面から向き合うようになる。
もっともデリダはそう言われることに反発し

「外国で、脱構築の「政治的な転回」とか「倫理的な転回」と呼ぶことがあるようですが、わたしはこうした転回よりも連続性を感じとろうとしているのです。(下p.366)

とも語っている。

どかかで誰かが(いい加減でごめんなさい)
「デリダの文章が分からないとうのは分からないことに意味がこめられている」
みたいな感じのことを書いていたが、80年代前半くらいまでは
おそらくは「いかにもデリダ」な感じは意図的に行っていたのだろう。

理由の一つとしては、僕はデリダを高邁なダジャレ哲学詩人と考えているが、
デリダ自身がもともとそのような傾向を持っていたこと。
もう一つが時代状況にあっただろう。
60年代のフランスといえば知識人にとって
共産党にコミットするかは大きな試金石となることだった。
ここで非共産党にしてかつ非保守という立場をとる戦略上、
あのような文体が編まれていったのではないか。

しかし80年代、最早共産党は力を持たず、
そしてハイデガーやド・マン
(二人をこう対比することをデリダは批判しているのだが)
をめぐるナチとの関係での議論。
こういったことがデリダに「正義」に向かわせたのだろう。

下巻に収録されているインタビューではデリダは
彼の中のストレートな「左翼性」を明らかにしている。
「ユートピアではなく、不ー可能なもの」では
リチャード・ローティの「文化左翼批判」に、限定的ながら同意する。
アイデンティティ・ポリティクスについての二つの批判、
右翼の主張に根拠を与えかねないという危惧と
「社会的あるいは市民的な連帯や普遍的大義が二の次」にされるおそれ。
デリダの回答は教科書的ともいえるものだ。

でもこの二つのテーマ。文化的アイデンティティと社会的な正義のどちらかを選択しなければならないという理由はあるのでしょうか。どちらも正義について感心を表明するものであり、抑圧と不平等のもたらす暴力に対する二つの回答なのです。この両方の戦いを同時に同じペースで遂行するのはたしかにきわめて困難なことです。でも文化と社会という二つの前線で同時に戦うことは可能ですし、わたしはそれが必要だと考えています。(下pp.299-300)

このあと知識人の役割についても「まっとう」に応えている。
また少しあとにはこうも言っている。

わたしが考えているのは世界的連帯のことです。(中略)ただわたしが〈インターナショナル〉という古い名前を採用したのは、国境を越えて労働者と抑圧された人々をふたたび結びつけることができるはずの革命と正義の精神のようなものを思いだしてほしいからです。(p.303)

長い議論にもとずいて展開すべきこの問いに、短くはしょって答えるとすれば、わたしはみずからを断固として左翼であると考えています。(p.306)

いやぁ、どうですか。気持ちいいではありませんか。
あのデリダが言うからなんですけど。
デリダの議論は「ヨーロッパ」をめぐって展開するものが多い。
しかし人種や移民の問題。歓待や民主主義について、
それらは日本人にとっても縁遠い話なのではない。

サンデル(個人的にはかなりの留保付きだけど)もいいかもしれないけど
デリダもねん、ということを改めて思いました。


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佐藤太郎(仮)

Author:佐藤太郎(仮)
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