またまたスパゲティ問題

前にこんなことを書いたが、スパゲティを食べる際にフォークと共にスプーンを使うべきか使わざるべきか、スプーンを使うことは子どものやることなのか「上品」なことなのかということは、アメリカ人も長らく頭を悩ませていたようである。

クリント・イーストウッド監督の『ジャージー・ボーイズ』に、1950年代にイタリア系移民であるフランキー・ヴァリが家族と食事をする場面があった。ここで父親はフォークとスプーンを使ってスパゲティを食べていたが、フォークに大量の麺を絡み付けているように、お世辞にも上品な食べ方という印象はしなかった。


最近ジョン・カサヴェテス監督の『こわれゆく女』(1974年公開)を観たのだが、ここにもこんな場面があった。

ピーター・フォーク演じるイタリア系のニックが同僚たちを自宅に連れてきてスパゲティをふるまう。ほとんどがフォーク一本で食べているのだが、数人はフォークとスプーンを使って食べており、ニックもスプーンを使っている。さらにニックは黒人の若者に向かって「スプーンを使ってフォークに巻け」と食べ方を指導するのだが、この若者はうまくできずに皿をひっくりかえしてしまうのである。

これはいったい何を表している場面なのだろうか。人種間の習慣の違いなのか、あるいは粗野な印象を与えるニックがテーブル・マナーを説くことの滑稽さを表しているのだろうか。よくわからないのだが、少なくともこの作品においてニックはフォークとスプーンを使ってスパゲティを食べることを子どもっぽくてほめられたものではないということではなく、むしろ正しい食べ方だと認識しているとしていいだろう。


これらから類推できるのは、おそらくはイタリアからアメリカへやって来た移民の中にはパスタ類を食べる際フォークとスプーンを合わせて使う人々がおり、これは「上品」な、あるいは「正式」なマナーではなかったのだが(むしろ褒められたものではなかった可能性が高い)、イタリア系の人がああやって食べているのだからということでアメリカで広まり(あるいはニックのような人がこうして広め)、さらにそれがアメリカ経由で、伊丹十三が『タンポポ』でネタにしていたように日本を含む地域に「上品」な食べ方として伝播してしまったということいったあたりなのだろう。

だからなんだと言われれば別にどうということもないのだが、一度気になり始めるとこういった場面がどうも印象に残ってしまうもので。


ちなみに『こわれゆく女』はひと言でいうと、ニックの妻のメイベルが精神を病んでしまうという話なのだが、メイベルの突然テンションが高くなって唄いだしてしまうかと思えば突如不機嫌になって罵詈雑言を撒き散らしたり、理解しがたいエキセントリックな行動に及ぶといった症状は知り合いにもいるもので、なんだか他人事に思えずに観るのが結構辛かった。そこらへんはおいとくと、映画としては夫婦のキャラクターを含めて独特というか不思議なテイストで、なかなかに面白い作品でありました。








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