『ゲバラ コンゴ戦記 1965』

『ゲバラ コンゴ戦記 1965』をパラパラと。




1965年、ゲバラは公の前から姿を消す。
すでに殺されている、幽閉された、精神病院に入院しているなど
様々な噂が流された。
1967年に捕らえられ、処刑されたことでゲバラが
ボリビアに潜入していたことが明らかとなる。
しかしそれに先立つ1年、彼がどこで何をしていたのかは
長らく謎に包まれていた。
ゲバラがコンゴに潜入していたことは噂としては広く出回っていたが
キューバ政府が公式に認めたのは1988年になってからのことだった。

本書は未公開だったゲバラによるコンゴでの活動の総括の文書や
様々なインタビューから、その足取りを追ったものである。

ゲバラはなぜコンゴへ、そしてボリビアへと向かったのだろうか。
これにはいくつかの要素が複雑にからんでいる。
まず、キューバでの居場所がなくなっていったことが挙げられるだろう。
親ソ路線を強めるカストロとそれに反対するゲバラの対立は激しくなっていった。
ゲバラは「社会主義国は帝国主義諸国との暗黙の共犯関係を清算すべき」だと
主張した。つまりラテン・アメリカやアフリカでの革命を支援せよ、ということである。
一方ソ連はゲバラを「冒険的ウルトラ革命主義」と批判した。

孤立し始めたゲバラは自分の死に場所を探していたようにも思える。
と、同時に、やはりこれらの活動は彼自身の使命感によって
なされたものとも思える。
一種の自殺としてではなく、本気で革命の成就を信じてもいたのかもしれない。

しかし本書によって図らずも明らかになったのは、
ゲバラのこの試みは失敗を運命付けられていたのである。
ゲバラは「正義」によって革命は成ると考えていたのだろう。
キューバ革命は成功するなど誰も考えていないような
絶望的な戦いに思われたが、結果は成功に終わった。

ゲバラがコンゴで、そしてボリビアで体験したのは
キューバとはまるで違うものだった。
兵士の士気は低く、教養も知識もない。
コンゴでは呪術を信じるなど「未開」の迷信が根強かった。

マルクスは当時としては視野の広い思想家であったが、
それでもそのヨーロッパ中心主義、
ユダヤ・キリスト教的世界観であるヘーゲル主義から
逃れることはできなかった。
マルクス自身の思想がどこまで「マルクス主義」に反映されていたかは
さて置いて、これはマルクス主義にはらまれる
決定的欠陥であったといっていいだろう。

この世界観では、歴史の必然である進歩は当然受け入れるべきこととなる。
ソ連ではしばし反体制派の人々が「精神病」であるとして
精神病院に収容されたという。
革命が成就した世界を否定するなど常軌を逸しているということだ。

そしてこの世界観が前提とするのはヨーロッパ近代主義である。
本書の解説で太田昌国氏も触れているように
いわゆる「第三世界」などの非ヨーロッパ地域の個別性というものを
無視した、地に根を下ろさない活動になってしまう。
もちろんこれは「第三世界」だけに当てはまるのではなく、
人間の個別性を無視するというマルクス主義に付きまとう欠点でもある。

ゲバラの「正義」についていくのは当然のことで、
彼はなぜ人々がつてこないのかが理解できなかったのかもしれない。
コンゴでの黒人、ボリビアでの先住民、白人であるゲバラ。
彼らを解放しようというゲバラの気持ちは純粋なものだったろう。
しかしだからといって彼らが無条件に「歴史の必然」を信じるのではない。
これはゲバラの敗戦記であると同時に「マルクス主義」の敗戦記でもある。
ゲバラの限界をも示してもいる。

もし僕が50年代末から60年代に生きていたなら
ゲバラにすっかり参ってしまっていただろうし、
仮に彼に直接会えたなら崇拝だってしていただろう。
圧倒的カリスマ性、真摯で実直な性格。
ジョン・レノン曰く「世界で一番恰好いい男」。
一方で、ゲバラがキューバに残っていたら、
あるいはラテン・アメリカのどこかの国で革命を成功させていたら、
おそらくはただの「困ったちゃん」になっていたことも否定しがたいことでもある。
その、あまり考えたくない可能性も直視しなければならない。

本書には写真も収録されているが
ゲバラがコンゴかボリビアへ潜入するために変装したものもある。
これを見てあのゲバラだと気づく人はまずいないだろうなあ。
ここらへんはソダーバーグの映画でも再現されていましたね。
あの映画といえば「ゲバラの手紙」についても
本書でその状況が描かれてもいます。

しかしボリビアでの『ゲバラ日記』も読んだことあるけど、
よくあの環境に進んで身を置いたものだと思う。
しかもひどい喘息持ちで。
僕も子どものころ喘息やったことあって、今でも軽いものだけど
時折出るんだけど、あれほんとに辛いのですよね。

変装写真はここ
ルパンも真っ青?





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佐藤太郎(仮)

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