アメリカの「社会主義」

'Socialism is a dirty word for most Americans'という言葉から始まるAll Things ConsideredBernie Sanders Delivers Anticipated Speech On Democratic Socialismを読むと(ラジオを聞いて理解できるほどの英語力はないのでたいていは「読んで」います。アメリカの公共放送のNPRはポッドキャストがアップされてから半日くらいでtranscriptもあがるので、英語の勉強をしたい人にはいいのではないでしょうか)、democratic socialistを名乗るバーニー・サンダースがなぜこれほどの支持を集めているのかが少しわかるかもしれない。

「過激な左翼」を期待(あるいは懸念)している人にとってはサンダースの言葉は拍子抜けしてしまうものだろう。せいぜいニューディールの頃に立ち返れといった感じのリベラルであり、「辞書的」な意味での社会主義とは明らかに別物である。もちろん予備選挙の最中なので穏健な言葉を選んでいるということもあるのだろうが、右傾化の進んだアメリカ政治へのアイロニーとしてsocialistを自称しているようにすら思えてしまう。

これと関連してのSanders Speech Highlights Generational Divide Over Socialismを読むと、現在のアメリカにおけるSocialismがイメージできるだろう。

Kei Kawashima-Ginsbergによると、65歳以上で「社会主義」を支持しているのは15パーセントなのに対し(むしろそんなにいるのかという感じでもあるが)、若い世代ではこれが39パーセントに昇るという。高齢層では「社会主義」というとまずソ連が浮かぶが、若い層では学費や健康保険が無料といった北欧の国々のイメージになるという。とりわけ2000年代後半以降に大学に行ったり就職した世代は、学生ローンにがんじがらめになり家を買う機会も減り、親の世代より厳しい生活を強いられており、「アメリカン・ドリーム」や「資本主義」を信じることができなくなっている。

アメリカ合衆国以外の国では北欧諸国を福祉国家と考えても社会主義国家とはしないだろう。つまり「民主社会主義者」のサンダースの支持者の一部は、「辞書的」な意味での社会主義を求めているわけではなく福祉国家(の再建)を求めているのであり、また大学生はこれから左傾化していくというよりはむしろ保守化していく可能性もあるようだ。

共和党支持者は、国民皆保険ですらない「オバマケア」を「社会主義」的政策だと罵り、オバマを「社会主義者」だと罵倒するのだが、これは他の国では理解し難い批判であるが(国民皆保険制度が社会主義ならば、日本を含めて世界は社会主義国家だらけということになる!)、アメリカ合衆国の感覚では反対派にしろ支持派にしろこの言葉のチョイスはそう違和感がないものなのかもしれない。

レーガンが猛威をふるった80年代以降、「リベラル」という言葉はアメリカ政治では忌避されるようになっていき、「私はリベラルではない、プログレッシブだ」なんて言い換えをする政治家もいるが、一方でジョージ・クルーニーなんかは自分をリベラルだとあえて強調し、リベラル派から喝采を浴びている。サンダース支持者の一部はリベラルを飛び越して社会主義に向かったということではなく、下手をするとクルーニーあたりよりも右寄りなのだが、他に適当な候補がなく、新鮮味のある言葉がないために、サンダースのもとに集り、「社会主義」に好感を持っているという面もあるのかもしれない。

アメリカに住むガチの社会主義を志向する左翼というのも少数ながらいることはいるのだろうが、こういう人にとってはサンダース現象というのは少々複雑なものに映っているのか、あるいは民主党の共和党化に歯止めがかけられると歓迎すべきことと見えているのだろうか。
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佐藤太郎(仮)

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