『ひそやかな復讐』

ドナ・タート著 『ひそやかな復讐』




今になってようやく読みました。

9歳の少年ロビンが首をくくられ吊るされ殺されるという事件が起こる。未解決のまま時は流れ、当時赤ん坊だったハリエットは12歳になっていた。父は家を出てめったに帰らず、母は自責の念にとらわれ続けほとんど廃人のようになり、事件現場を目撃した姉は無気力に空想にふけるばかりであった。頭脳明晰で大胆不敵な少女に成長していたハリエットは兄の死の謎を解き、復讐を誓うのだったが……


扶桑社ミステリーから出ているのだが、謎解きに重きを置いたミステリーを期待すると少々肩透かしをくらうかもしれない。解説によると原著発表後アメリカでは長すぎるという声もあったようだが(文庫で上下合わせて約1200ページ)、確かにミステリーとしての興味だけで読むと冗長な描写や脱線が多すぎると感じられるかもしれない。

しかしこの作品は、典型的ともいえるアメリカ南部小説として読まれるべきだろう。時間が失調したような雰囲気、崩壊感覚、気だるさ、濃密な人間関係とそれゆえの抑圧感、階級問題、人種問題と、これでもかと詰め込まれている。『アラバマ物語』をよりダークにして、スティーブン・キングの作品舞台をディープ・サウスにして超常現象を抜いたような作品といった感じであろうか。

ドナ・タートはミシシッピ出身、『シークレット・ヒストリー』が処女作であるにも関わらずクノップフが45万ドルで版権を獲得し話題となり、92年に出版されるとベストセラーとなった。実に10年のインターバルをあけて2002年に本作を刊行。タートはこの執筆期間について訊ねられると、「駄作を十冊書くよりも、傑作を一冊書きたいから」と答えたという。
訳者あとがきには「願わくば、十年もたたないうちに次作を発表してもらいたいものである」とあるが、The Goldfinchが発表されたのは2013年のこと、つまり11年かかることになるのである。

The Goldfinchは村上春樹も繰り返し絶賛しているし多分邦訳はそのうちに出てくれると思うが、本国においてもタートの次作はいつ読めるのかと気を揉んでいる人は多いのだろう。





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