『ピストルズ』

阿部和重著『ピストルズ』




世間では年間ベスト10だのという話題の時期になりましたが、一年遅れで読みました。

『シンセミア』『グランド・フィナーレ』に次ぐ神町を舞台にしたサーガの一作。
いきなり『ピストルズ』を読み始めてもお口ポカーンってことはないですが(両作のダイジェスト入り)できればこれらを読んでからの方がいいでしょう。
ちなみに「ピストルズ」は拳銃のpistolではなくめしべのpistilです。ダブル・ミーニングなんでしょうが。


あの惨劇を経てすっかり無気力になっていた神町の書店経営者石川は、出版社の営業担当者から神町に住む作家の存在を教えられる。その人物は奇妙な噂を持つ謎めいた菖蒲家の次女だという。興味を憶えた石川が菖蒲家に向かうと……


『シンセミア』の暴力というエンジンに憎悪というガソリンをぶちこんだような疾走感は小説の長さというものを感じさせなかった。
それと比べると本作の中間部分の菖蒲家をめぐる壮大な歴史の語りの「ゆるさ」は否めない。おそらくはこの「ゆるさ」というのは意図的なものと思われるが、個人的好みとしてはもう少し刈り込んだほうが良かったかな。

ただ後半の展開はこれだよ、これという感じで良かったんですが、どことなくラノベっぽい?感じを中盤からあえて引きずっているのかあ、とも。といってもラノベって一冊も読んだことないんであくまで勝手なイメージに基づくあまりにてきとうな感想ですが。菖蒲みずきに萌え~って人も結構いるだろうし。

『グランド・フィナーレ』もそうとうに奇怪な小説ですが、『シンセミア』とは地続きな雰囲気も多い(設定という意味ではなく描き方として)。『ピストルズ』はそういうものとはまた違う色を出そうとしたように読みました。

最後の部分は図らずも現在の世相を反映したかのようなものになっているのだけれど、予言的というよりも世の中の進歩のなさの反映という気も。

『シンセミア』は文句なしの傑作というのに異論のある人はあまりいないでしょうし『グランド・フィナーレ』はある程度好みは分かれても評価は安定したものでしょう。そういう点では結構評価は分かれるかな。
この「あえて」の部分をどう見るかでしょうね。
いずれにせよ(今更こんなこと言うのもなんですが)やはり阿部和重とう作家は抜きん出た力量を持っているということは疑いないことであります。

いつか神町にでも行ってみようかなぁ。
まあ現実の神町は暴力にあふれロリコンが集まっているというわけではないのでしょうがw




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