『ER』再訪

テレビ東京で『ER』の再放送が始まっていて、特に熱心なファンというわけではなかったし見返そうと思っていたわけでもなかったのだが、つい録画して何話か見てしまった。

日本でも鳴り物入りという感じでNHKで放送が始まったように記憶しているが、当時は「ハゲかかったおっさんが主役ってすごいな!」と思ったものだし、イメージとしては四十歳前後のようにも感じられたのだが、 グリーン役のアンソニー・エドワーズもロス役のジョージ・クルーニーもまだ三十代前半であったのですね……

『ER』はジョージ・クルーニーの出世作としても有名だろうが、第一話なんかを見るとまだロスというキャラクターが固まっていなかったというせいもあるのだろうが、やたらとニタニタ笑ったり、これみよがしに憂い顔をしてみたりといった感じで、全体的に演技が硬いというかかなり下手な印象すら受けるのだが、数話で落ち着いてくる。まあ誰にもこういう時期はあるのだろうと考えるとなんだか微笑ましくも思える。

それにしても、グリーンとロスが仲良くしてるのを見ると「葬式くらい行ってやれよ」と思ってしまうことにもなる(エドワーズの降板希望によりグリーンは死亡という形で退場するが、すでにロス役を降板していたクルーニーは葬式シーンにも登場しなかった)。まだ幼いグリーンの娘のレイチェルも一話から登場していて、最後は医学生として顔を出すことになる。


このように今になってシーズン1を見ると、いろいろと時の流れを感じさせる要素も多い。
携帯電話で医療機器が誤作動するなんてエピソードもあったが、もちろん携帯はすでに商品化されていたとはいえ一般にはそれほど普及はしておらず、緊急呼び出しもまだポケベルという時代である。

また近年のアメリカのドラマを見ると出勤時やちょっと話をする時などやたらとテイクアウトのコーヒーを持っていることが多いのだが、この当時スターバックスはすでにできていたとはいえあのスタイルのコーヒーチェーンが爆発的に普及するのはもう数年後のことなので、いかにもファストフードのといった感じの紙コップであって、あの手のコーヒーを持ち歩いている人はいない。


こういった面だけでなく、編集や演出といった点でも意外と古いというか、「ドラマっぽい」感じがする。アメリカのテレビドラマを数多く見ているわけではないので根拠のない印象論であるが、ここ十数年でシリアスなタッチのドラマの演出等の手法はかなり変化したのではないだろうか。製作陣が一部重なる、90年代後半に始まった『ザ・ホワイトハウス』なんかも、ストーリー展開はともかく演出などではかなり古いようにすら感じられてしまうので、2000年代に入ってから変化が生じはじめたのかもしれない。

もっとも一口に「アメリカのテレビドラマ」と言っても、地上波もあればケーブルもあり、さらにはネット配信なんてものすら始まるという時代になっており、当然視聴者層に演出も合わせることになるので、地上波である『ER』は当時としても多少「保守的」な面もあったのかもしれないが。『ER』も後半になると大分演出手法も変わっていったような気もするので、シーズンごとの演出や編集を比較検討してみても面白かったりするのかもしれない。

『ER』は狭いセットでの撮影になるためにステディカムを積極的に使い、これもあって「従来のドラマのイメージを塗り替えた」みたいな宣伝文句もあったような気がする。確かにストーリーにおいても、学生ローンの問題であったり終身在職権をめぐるゴタゴタなど、これまでの医療ドラマでは描かれなかったリアルな姿が描かれるのであるが、ならば『こち亀』の中川じゃあるまいし、カーターが大富豪であるという設定は必要か? とも思えてしまう。こういったあたりも含めてアメリカのテレビドラマにおいて過渡期的な位置にあったとも考えられる。

アメリカのドラマといえばケツの毛までむしるというか、とにかく数字が良くて予算が獲得できる限り無理やりにでも続けるというような印象もあるが、『ER』も主要キャストが次々と降板していき、ついいはシーズン1でのメインキャラクターが全員いなくなるということにまでなってしまう。90年代といえば『ビバリーヒルズ青春白書』なんてのもあったが、あれも後半など久しぶりに見た人は思わず「お前誰だよ!」と言いたくなるようなことになっていたが、やたらと狭い範囲で男女がくっついたり離れたりするのも共通している(あんなの気まずくって仕方ないと思うのだが)。
こいった悪癖は近年は大分マシになってきたようにも思うが、『glee』なんかを見るとまだやっぱりねえ、というところでもある。


……なんてことを思いながら見ていたのだが、『ER』のシーズン1が放送されていた90年代半ばの20年前といえばもちろん70年代半ばということで、当時の僕は70年代のドラマなど化石でも掘り起こしてきたかのように古く感じたことだろうが、今の高校生あたりにとってはまさに『ER』のシーズン1なんてそんな感じになるのか。
2016年の夏休みにたまたま見た高校生は、「今から20年以上前のドラマなのか、俺まだ生まれてねーし。っていうかあのピーピー鳴る機械なんだよ」なんてことを思ったりしているのだろうか。






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佐藤太郎(仮)

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