『荊の城』映画化!

サラ・ウォーターズ著 『荊の城』



19世紀半ばのイギリス。母親が殺人犯として処刑されたスウは、サクスビー夫人に娘同然に育てられた。17歳の彼女はすりとなっていた。貧しいこの界隈では犯罪に手を染めずに生きていくことなどできない。そして<紳士>という綽名を持つ詐欺師がスウにある計画を持ちかける。<紳士>は変わり者の住む城で奇妙な仕事に就いていたが、彼の狙いはその姪、モードにあった。モードには結婚した時に相続できる莫大な財産があった。<紳士>は確実にモードを落とすために、スウを侍女としてブライア城に送り込もうというのだった。字を読み書きすることもできないスウは俄仕立ての侍女となって、モードと出会う。計画では、<紳士>はモードと駆け落ちして、そのまま彼女を精神病院に閉じ込めることになっている。純情可憐で、精神的に不安定なモードを前に、スウの心は揺れ始める。モードは結婚をしたらその初夜に何をすることになるのか教えてほしいとスウに頼む。スウはモードと唇を重ねてしまう……


ミステリーでもあるので具体的には書かないが、この後あっと驚く大どんでん返しが起こることになるのだが、これはまだ物語の三分の一ほど。この後さらなるどんでん返しが繰り広げられていくこととなる。「リアリズム」的にはいくらなんでも、という仕掛けかもしれないが、作中にディケンズが言及されているように、いささかご都合主義的な設定を含めて、19世紀を舞台に19世紀的物語を紡ごうとしたものである、とひとまずはすることができる。しかしセクシャリティをはじめとして、19世紀のイギリス小説ではまず正面から扱われることがない題材ともなっている。あるいはディケンズなどヴィクトリア朝の作家が21世紀に小説を書いたなら、このような物語になっていたのかもしれない。

とにかくページをめくるのももどかしく思える面白さであること請け合いなのであるが、しかしこの小説が映像化に向いているのか否かは意見が分かれるかもしれない。最初のどんでん返しくらいまでは、映画化にぴったりだと思えていたのだが、しかし次第に、テレビシリーズならともかく一本の映画にまとめるのはかなり難しいかも、とも思えてくる。腕のいい脚本家と演出家が組めば非常に魅力的になるのだろうが、しかし腕がない製作陣にかかるととんだ大惨事にもなりかねないような気もしてくる。

すでに2005年にBBCでミニシリーズ化され、日本版のソフト化もされている。長さだけでなく手法の点でも、このあたりのフォーマットが一番向いているのかな。でもやはり一本の映画として見てみたいかも……なんてことを思っていたのだが、こちらにあるようになんとパク・チャヌクが1930年代、日本支配下の朝鮮半島に舞台を移して映画化とのこと(そんなこと全然知らずに、大分前に読んでいた)。邦題『お嬢さん』で日本も公開が決まったが、これはすごい作品になっていそう。




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