『ヘビー・ウォーター・ウォー』

『ヘビー・ウォーター・ウォー』

「ヘビー・ウォーター」とカタカナで書かれるとピンとこないが、重水のことである。ノルウェーで作られる重水は原子爆弾実現のために必要とされ、第二次世界大戦開戦前からドイツとフランスの間で鞘当が繰り広げられていた。第二次大戦が始まるとナチス・ドイツはノルウェーを占領する。ノーベル賞受賞者である天才物理学者ハイゼンベルクは亡命せずにドイツに残り、原爆開発に取り組むことになる。ドイツは大量の重水をノルウェーから輸入しようとするが、ノルウェーから脱出しイギリス軍に合流したレジスタンスたちはこれを阻止しようと、工場の破壊を試みる……





ノルウェー製作のテレビ・シリーズで、かなりの予算をかけたようでなかなかのスケール感のある作品に仕上がっている。『テレマークの要塞』をはじめとしてしばしば取り上げられてきた出来事であり、結果がわかっているとはいえ、はらはらとさせてくれる。

原爆開発に取り組むハイゼンベルク、ナチス・ドイツ占領下ノルウェーの化学工場、ノルウェーから脱出してイギリス軍と協力して破壊工作を試みるレジスタンスと、三つの視点から描かれる。
個人的に注目はハイゼンベルクがどう描かれるかであった。ナチ党に入党はしなかったものの、亡命は拒みドイツに残って原爆開発に取り組んだハイゼンベルクの「真意」がどこにあったのかは諸説ある。本気で実現しようとしたが失敗したのか、気乗りしなかったのか、サボタージュを行ったのか、本作でもそのあたりはおそらくは意図的に曖昧に描かれているが、やや同情的に解釈できるような雰囲気を漂わせている。

そういえば「帝国」に新兵器開発に自分は不可欠なのだと思わせておいてサボタージュするというのは『ローグ・ワン』に登場するゲイレン・アーソだが、ハイゼンベルクあたりからの影響もあったりするのだろうか。『スター・ウォーズ』といえば、僕は砂漠や雪原の光景というのにどうにも惹かれるのであるが(もっとも自分で行くのは御免だが)、この作品も『インセプション』もとい『女王陛下の007』など、雪原でのアクションが好きな人にとっても楽しめるだろう。

史実を基にしながらも主要キャラクターに虚構の人物がいるなどかなり脚色が施されているようだが、しかしわかりやすいエンターテイメントに落とし込んでいるだけではない。ノルウェーにとってはこの一連の出来事は英雄的レジスタンスの活躍として神話化するだけで済ますわけにはいかない苦いものでもあり、本作はそのあたりもふまえられているあたりには好感が持てた。



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Author:佐藤太郎(仮)
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