『アメリカ大都市の死と生』

ジェイン・ジェイコブス著『アメリカ大都市の死と生』




これについてはなんといっても山形浩生氏による微に入り細にわたる訳者解説があるのでこちらを参照下さい、で済ませてもいいのだけれどまあいくつか。

「死んだような街」と「生き生きした街」とを分けるものはなんであろうか。
ジェイコブスが擁護するのは多様性、もっといえば雑多性であり、それらが有機的に絡み合ってこそ都市に生命は宿る。新しい建物、広い道路、きれいな公園によってもたらされるものではない。

印象深いエピソードがある。ボストン市の都市計画担当者はノースエンドを「スラム」と呼ぶ。しかしそこは実際には青少年非行率も疾病率も幼児死亡率もボストン中最低であった。この「スラム」は死んでいるのか生きているのか、考えてみるまでもないだろう。

ここからわかるように本書は行政による強引な再開発事業などへの抵抗の書ともなった。
ジェイコブスは都市計画の専門家などではなかった。それでも、いやそれだからこそファーストハンドで得た体験と直観を武器に、生きた街についてのすぐれた考察を生み出した。一方で素人ゆえの机上の空論もあることも否めない……というあたりは山形氏の解説を。

個人的には日本の都市というのは都市自体が魅力的を発するということが少ないように思える。これはノースエンドを「スラム」と呼んだ担当氏よろしくごみごみしたものや異質なものを排除しての画一性の結果なのかもしれない。

原著は1961年の刊行。旧訳は未読だが抄訳であったうえに訳にも問題があったようである。
50年かかってようやくといえばようやくなのだが、今読んでも得ることは多い。
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佐藤太郎(仮)

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